北八ヶ岳

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2004年 3月27日−3月28日

春がきた。
何かを象徴するわけではなく、具体的な気候の話だ。冬の透明な空が去り、霞んだ空気と季節の変わり目の風雨、ある人々にとっては花粉の季節となる。 僕にとっては星の写真の季節が終わり、そろそろ釣りとか自転車旅行にでも行きたくなってくる。
やばい。今年こそ雪山に登ろうと思っているのに。

月曜から何度も雨が降り、週間予報も目まぐるしく変わる中、週末は狙いすましたかのような好天。理想的である。これを逃してはいけない。
目指すは雪をたっぷりと抱いているはずの北八ヶ岳。

土曜日。前日に飲み会があっても、いつも通りの時間におきる。サラリーマンになって、こういう習慣が身についたのは良いことだと思う。飼い馴らされているというよりも、健康的であるし、効率的だし、自然だ。
八ヶ岳は交通期間がしっかりとしていて、標高2000m、人間の世界ではないところまでまったく歩かずに行けてしまう。 だがちょっと金がかかって、往復で約15000円。チケット屋で特急券買っておけばもうちょっと安くなったはずなのだが。
八王子で中央線に乗換。特急の込みあった車内からは八分咲きの桜、ところによっては梅を前景として、大菩薩や南アルプスの白い山々が目を引き、これからの山行への期待が高まる。

バスで1時間、スキー場の入り口からはロープウェイに乗る。スキー場のリフトなのでスキーヤー、ボーダーが多いのは当然だが、このロープウェイには観光客と登山者も乗っている。 ロープウェイ頂上駅から小屋までは10分足らずで着く。普段着の観光客でも来れてしまう平坦な道で、登山靴と大きなリュックがおおげさに感じられてしまうほどだ。
今日の宿は縞枯山荘。三角屋根の可愛らしさでここに決めた。 夕食まではまだ時間があるので付近を散策する。

雪はどのくらい積もっているのだろう。踏跡の上を歩いているときはまったく意識しないで歩けるが、少し道をはずしてみると数歩目にいきなり体が沈む。草木がおおっていたからか、ところどころに自然の落し穴ができているようだ。雪原に顔だけ出して、まだ足もとはふわふわしていたから、2mくらいはあるのだろう。あるいは、山の中では感覚が少し違うかもしれない。 風にさらされた稜線では大地が露出しているし、谷間ではどのくらい溜まっているかわからない。
よく晴れた青い空の下、雪は光り、緑は深い。 それだけ。晴天なのに多くの色はない。単純な美しさだ。

夕食後は星の時間。前回のkiss Digitalに続き、今回はEOS‐10Dを借りた。が、どうも充電が足りてなかったようで、数枚撮ったところで動かなくなる。予備に持ってきた電池も未充電だったようで、意味がない。氷点下の雪山、さらに長時間露光という過酷な条件とはいえ、電池が切れたらただのおもりである。今後は気をつけよう。 その点、もう一台持参した銀塩カメラ、OM-4はいざというときに頼りになる。このカメラも電池の持ちは悪く、さらにここのところシャッターの調子が悪いのだが、バルブは完全に機械式なので、ここはそう簡単に壊れないようだ。電池が切れようが調子が悪かろうが、星の写真は写せる。 坪庭周辺を2時間ほどかけて撮影する。風はそれほどなく、寒さは厳しくはない。雪原が月光に照らされて砂漠みたいだった。
焼酎を雪で割ったのを呑んで就寝。冬の山小屋では水道がないため新雪のほうが手軽なのだ。

朝日を見に行く。
まわりは針葉樹と一面の雪だが、やはり春になっているようだ。厳冬季の、針の先端よりも尖がったようなはっきりしたものではなく、快晴とは言えもっとなんとなく昇ってくる。よく言えばパステルカラーの暖かみのあるものだ。

朝食後、今日はそれほどはっきりとした目的地はない。 付近の展望台をいくつか散策できれば良い。 雨が岳から三ツ岳を回り、北横岳を見てきた。 もっとも展望が良かったのは北横岳だが、三ツ岳のほうが雰囲気があった。周囲のたおやかな山とは違い岩がごつごつとしていて、比較的登りにくいといえるが登ったぞという感じはする。手頃である。 三つ岳山頂から 蓼科山と林檎
今回スノーシューを借りてみることにも興味があったのだが、その必要はなさそうだった。まわりに履いている人はいないし、それらしき足跡もない。登山アイゼンで歩きやすい。スキーも背負っている人は見たが、滑ってはいる人は見なかった。雪質とか、場所とか、どこでも使えるわけでもないようだ。
12時ごろ、ロープウェイ山頂駅着。まだ日は高いが、今日はこれでおしまい。行動時間は4時間程度か。

これから新宿へ帰り、離婚届に判を押すという仕事が待っている。(私が離婚するわけではない。結婚もしてないし。)
電気も水道も通じない雪の頂の世界と、人間同士の感情の行き違いを一枚の書類にして手続きをする世界。なかなか好対称なコントラストだが、その間の境界は数時間、バスと特急に乗って車窓の春をぼーっと眺め、駅弁をつついていると越えてしまう。3時半に新宿に着いてしまった。
世の中どうなっているのやら。


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宿泊・アクセス

縞枯山荘 

アルピコバス ピラタス行きの終点でロープウェイに乗り換える


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