北八ヶ岳 |
2002年 10月13−14日 何のために山へ登るのか。 近代登山が始まって以来問われつづけてきたこの質問に対しては、これまで僕は具体的で即物的な答えを持っていた。 去年の冬から目をつけていた北八ヶ岳。前回塔の岳に同行した大学の先輩も連れていくことにした。 彼を山の道に引き込むため、というのも今回の山へ行く理由の一つかもしれない。 初心者を連れて山の空気を楽しみに行くのだ。コンセプトは楽々森林限界、温泉・あわよくば紅葉の小屋一泊コースが完成した。 10月13日。連休の中日であるこの日も、空は気持ちのよい青一色だ。松本方面へ向かうあずさの車内は混雑していたが、甲府からは2席を確保することができた。 茅野からはバス。 白駒池のあたりは、観光客の姿が目立つ。登山者も観光客であるには違いないが、性質は少し違う。 まず服装からして違うが、観光客は挨拶をしてこない。ケシカランとかそういう話ではなくていちいち挨拶をしているときりがないからだろう。反面、登山者はすれ違う人々から情報を得る場合もある。 池を眺めながらビールで乾杯。予定ではまっすぐに高見石小屋へ向かいのんびりと散策するはずだったが、それではかなり時間があまる。にゅうへ向かってみるのも良いか。 白駒池を離れにゅうへ向かう道へ入ると観光客の行動半径の外へ出ることになる。ここですれ違う人は登山者なので、向こうからもこちらからも「コンニチワ」となる。好天の休日、人気の山域である。随分多くの人とすれ違ったが、同行者は人が少ないと感じたようだ。 北方は池や深い森林、南は硫黄岳の荒々しい稜線。東の滑らかな斜面に目を落とすと、色づいた唐松が鮮やかだ。視線を隣の先輩に移すと、様子がおかしい。感動してくれるかと思ったがそうではなく、高さにびびっているらしい。 にゅうを後にしてきた道を戻る。なるべく違う道を使うのが変化を楽しむためのセオリーだが、同じ道でも登りと下りでは受ける印象が随分と違う。ピストンだって悪くない。 4時20分、小屋到着。手続きをすませる。 この時点で一日はほとんど終わりだ。あとはご飯を食べて眠るだけ。これが山の時間だ。 夕飯までの時間は夕日を眺めて贅沢に使う。小屋のすぐ裏に高見石展望台がある。眺めはいいのだが、巨岩で構成されているため登りにくいのが難点だ。 夕食後、展望台へ向かって星を眺める。何だかんだ言っても大きな目的の一つであるには違いない。 風もなく寒くない。 2日目は天狗岳を目指す。北八ヶ岳を特徴づけるのは深い森林だということだが、なるほどそのとおり。 苔と針葉樹の作る白と深緑の世界。それが朝もやの中に沈んでいる。 死海の底に沈んだナウシカのイメージだ、いやもののけ姫のカタカタなるやつが出るところだ、と言いあうが、とにかく宮崎駿の絵の中のよう。 中山展望台を過ぎ、中山峠を目指すころから目の前に大きく天狗岳がたちはだかる。同行者は多少びびっているようだが、なに、見える程の距離ならば意外と簡単に着くものだ。 確かに鎖場や急登もあったが、難なく天狗岳登頂。 それぞれがカメラを持ってきている。それぞれが自分のカメラで相手を撮るものだから、自分のカメラには相手ばかり、自分の写真は向こうのカメラということになってしまう。
西天狗岳往復後、黒百合ヒュッテへ向かう。黒百合ヒュッテまでの道は巨岩で構成されており、危険は感じないものの歩きにくい道の連続で閉口した。 黒百合ヒュッテからは渋の湯発、3時の終バスを目指す。標高を下げるとともに、季節が逆戻りしていく。落ち葉から木々に留まる枯れ葉となり、徐々に色づいていく。秋に追いつくことができるか― 追いつくことができたのは登山口のギリギリのところ。山道が終わり明るく開けたところで、温泉と鮮やかな世界に迎えられた。これで予定どおりフルコースだ。 温泉で身を溶かした後、錦秋の道をバスで行く。バスはかなり混んでいる。公共の交通機関もまだまだ必用とされているようだ。 コースタイム10/13 11:30-12:00 麦草峠 12:30-13:00 白駒池 14:00-14:30 にゅう 15:30 白駒池荘 16:20 高見石小屋10/14 7:00 小屋 8:00 中山展望台 9:45-11:00 東・西天狗岳 11:50-12:20 黒百合平 14:00 渋の湯 使用金額 交通費 新宿-茅野 往復で 8800円(チケットショップ) 麦草峠まで バス 1400円 渋の湯から バス 1100円 宿泊費 7200円 2食付き (高見石小屋) 入浴費 800円 付近の山:▲北八ヶ岳 冬 ▲天狗岳・本澤温泉 冬 ▲蓼科・冬 |
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