丹沢 鍋割山

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2004年 2月8日−2月9日

山登りは週末でも十分できる。土曜日朝に出かけて1泊して下りてくればよいのだから雑作はない。会社の人となったとはいえ、チャンスはいくらでもあるはずである。
が、天気が悪いだの、税金つけるの手伝ってだの、腎臓結石がみつかっただの、用事ともいえない用事が頻出してようやくの初登山、山らしい山に登るのはは約5ヶ月ぶりになってしまった。
ここのところ、やや白くなっている丹沢山塊と、その向こうに頭を出す富士山を通勤途中の鶴見川の橋の上から確認するのが日課となっている。まずは丹沢小屋泊り、冬の山ってどのくらい寒いかも思い出すためにも、ご主人と料理が評判の鍋割山へ登ることにした。

いくつかある登山道の中から、寄(やどりぎ)を起点にし尾根道を登っていくコースを選ぶ。さびれた集落の茶畑の中、道標を探していくと落ち葉に覆われた山道となっていく。陽はやわらかく、風音のみが静かに吹いている。バスを下りて以来、農婦を一人見かけたのみで人かげは皆無だ。ぼーっと考えごとをするのには丁度いい。僕の持論ではこの静かで空がすみわたっている季節が太平洋側の山のベストシーズンだと思う。冬で山だからといって、登っている間は寒さを感じない。

途中、やや展望が開けた伐採地の日だまりで昼食をとる。 はたして25歳にしてこんなおっさん趣味で良いのだろうか。だがまぁ風と日差しとおにぎりが心地好いことは確かだ。
さらに1時間ほど登り、大倉からの道と合流すると登山者の数が増えてくる。2年前に塔の岳から降りてきた道だ。 その時を含めて丹沢には何度かきたことがあるが、大倉尾根、表尾根などは歩いていて痛々しい。登山道がえぐられていき土が流され、石が不安定に露出していく。登山者の数が自然の治癒力をこえてしまっている印象だ。きついとか歩きにくいとかいうよりも、山がどんどん崩れていくように思えて悲しくなる。 今回の寄からのコースはそのような箇所は感じられず頂上まで静かなひだまりの道である。うん、快適だ。

頂上3時着。富士山が大きい。北から東にかけては樹林があり、展望は塔の岳に一歩譲るものの、富士から伊豆、湘南、三浦が見渡せる素晴らしさだ。 山頂に人影はないが、小屋からおしゃべり声が聞こえてくる。チェックインをする。あぁこれがご主人の草野さんか。本や雑誌で見たことがある。
この小屋は草野さんが資材を担ぎあげ、独力で作ったという話を聞いたことがある。そのためか、屋根裏の寝室は低く、小屋もそれほどキレイというわけではない。が、普通に数十人の人々がだんらんしているこの空間を担ぎあげたといわれても、何だか現実感はない。とにかくすげえなぁ、としか言えない。

こたつで写真集を眺めていると夕日の時間になる。今日もきれいな夕日が見れた。さらに闇に沈みゆく街なみを写真に収めていると、夕食ですよとお声がかかる。
鍋だ。鍋割山の名にあやかって、今日のように人数が多い日の定番メニューらしい。(ほか、おでんに天ぷらが出た) 草野さんを含め、10人程度のおじさんの中に入れていただいた。他に団体向けにもう一卓。同席したおじさんたちはそれぞれ一人か二人できているようだ。大体定年前後の人たちで、彼らの若いころは社会人になるとそう簡単に山登りなどできなかったという。良い時代に産まれたものだ。
鍋割山荘 僕みたいな若造が丹沢の主のような存在の人に対してこんな形容をして良いのかわからないが、ご主人の草野さんは何だか可愛い人だと感じてしまった。容姿や愛敬があるという意味ではなく、誠実さが高じてそのような印象にまでなっていったのだろう。今日の宿泊者にも草野さんの人柄を慕ってきた人が多くいるようだ。
いろいろな話を聞くことができる。たとえば今日登ってきた登山道の整備について。 やはりかなりの部分を草野さんが整備しているらしい。数時間の山道の、一歩一歩に対してブロックや木段、土嚢を積んでいくわけであるから、僕にはその苦労がどのくらいのものになるかは想像できない。大風が吹けば倒木を処理しなければならないし、大雨が降れば雨に流された階段を処理するはずだ。毎日登っているからこそ得られるノウハウが多々あるようだ。 素直な感情なのか照れ隠しなのか、自分が歩きやすいように整備しているだけですよとおっしゃっていたが、そう簡単にできることではない。

それにしてもこのままのペースで登山者が登ってくると、今後はどうなってしまうのだろう。例えばニュージーランドのように、環境庁がしっかりと管理をして、場合によっては人数制限をするようなことも必要なのかもしれない。 こういうことはあまり考えたくない問題である。僕は楽しむために山にきているはずなのに、他人にこうすべきだなどと言いたくないし、言われたくもない。お前がやれよと言われても、少しの関心はあるものの、結局は何もしないで無責任なままでいるのを望んでいる。
草野さんの話によると、行政も少しはそういう活動をしているらしい。鍋割山、塔の岳山頂には立派なバイオトイレが設置されていたが、県が作ったようだ。ただやはりお役所仕事であることは免れないようで、草野さんに言わせると様々な不満があるようだ。
登山家の野口健さんが、都レンジャーというものになるという。小笠原に滞在して自然を守る活動の核となるとかいうコンセプトだったと思う。草野さんなど、知識と心のある山小屋の主人たちもそのように行政が制度化していき、それぞれの努力が個人的なものにとどまらないように、無理なく有効に生かせていければ良いのではないか。(とみなが思っているのだろう) Kiss Digitalによる星

食後はやはり星の写真をとる。今回はいつものOM4に加え、最近話題のデジタル一眼レフ、EOS-kiss Digitalを持ってきた。こういうものが会社で気軽に借りられるのだからありがたい。
これがもう大変な驚きだった。なにしろ気軽に写せる。初めてデジタルカメラを触ったとき以上の驚きといっていい。 とった写真をその場で確認できるというのはデジカメの大きな特徴だが、星の写真のような露出計のきかない、勘と経験が頼りの被写体にとってこれは革命的なことだ。 普通のデジカメで長時間露光すると、ノイズが増えて使いものにならないというのは過去の常識になっているようだ。 逆に実際の感度は高くなっている印象だ。デジカメの受光部には相反則不規というものがなく、露出時間を2倍にするとちゃんと2倍明るく写る。露出時間も短く、すぐに確認できるためスナップ感覚でパシャパシャ撮れてしまう。 富士山

もちろん戸惑った箇所もある。なにしろオートフォーカスを前提としており、夜だとピントが合わない。最近のレンズは温度変化などに対応するため、ピント位置無限遠が突き当て部になく、ピントの山がどこにあるかわからない。試し撮りをして拡大して確認するが、面倒なうえ不安は残る。
液晶の表示も曲者だ。どうも実際の明るさよりも明るく見えてしまい、実は露出不足だった写真も多い。まぁこれは慣れていけば補正はできる。 あと、やはり電池。機械式カメラと違い、電池が無くなると何もできなくなる。この寒冷地では消耗も早く、やはり不安だ。たとえば北極星の日周運動のような、20分以上の露出はする気にならない。(露出オーバーになってしまうかもしれない?) とはいえ、あの面倒なスキャニング作業はしなくていいし、メリットは大きい。しばらくは両方持っていきたい。

御来光を眺め、朝食をいただいて8時に出発。 9時30分塔の岳。確かにここからの展望はすごい。
前日に軽アイゼンが手元にないことに気付き、10本爪のアイゼンを衝動買いした。店のおじさんに言われた、とにかく履いて慣れることだとの声を思い出し、ここからアイゼンをつける。
雪はそこそこある。確かにつけると滑らなくなる。その感覚が面白い。が、アイゼンなしでも歩けないこともない。雪がない場所や木道なども多く、つけかけるのも面倒になってすぐに脱いでしまった。
11時丹沢山。周辺は木々に囲まれ展望はあまりないが、空は広い。ここの小屋に星を見にくるというのも悪くないかもしれない。日当たりの良いテーブルの上で昼寝をする。 丹沢山頂上

丹沢の主脈縦走路はこの先に続いているが、今日はここまで。塔の岳に引き返し、12時50分新大日茶屋で昼食。
だいぶ眠い。星の写真を撮りながらも少しは眠るようにはするのだが、足りてない。 烏尾山からは表尾根をはずれ、大倉を目指す。分岐には道が荒れているようなことが書かれていたが、心配するほどではなかった。たしかにわかりにくいところや危ない箇所もあったが、それを言えば表尾根だって荒れている。こちらの荒れ具合はただ整備されていない感じであり、登山者に負けている様子ではない。山登りが初めてという人は止めたほうが良いかもしれないが。

その後林道を1時間ほど歩き、大倉に5時着。睡眠不足もあり、さすがに疲れた。今日は早く寝よう。ぐっすり眠れるだろう。



星の写真集出しました。
丹沢の写真も多いです。

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