8月10日 4日目
さぁいよいよ海についた。夏といえば海水浴なのだ。 泳がないで何をする。 確か午前中と午後で別の海水浴場に行った気がする。一つは砂利の浜辺だった。 夕方からは釣りをした。ちっちゃなあじはすぐ釣れた。かわいそうなので逃がしていたが、試しにその中の一尾を、ラーメンの具としてなべの中に放り込んでみると、チビとはいえアジはアジだ。意外とおいしかった。 走行距離:46.0km (合計454.5km) 8月11日 5日目日本海に沿って久比岐自転車道というのが走っている。 印象的なのは長いトンネルで、この季節でもひんやりとする。
その後の調べでは、どうも電車の廃線を自転車道として利用しているらしい。 この日は自転車の修理をした。フロントギヤが一番軽いやつしか入らなくなった。 その後はあまり覚えていないが、港で釣りでもしてたのだろう。 少し遠いが、次の浜へ行くことにしよう。国道ならば道も良いだろうし、まぁ30分もあればつくだろう。 この国の中心にそびえたつ日本アルプスの連峰。その我が国最大の山岳地帯が日本海へと落ち込んで行くところ。北陸道最大の難所、親不知とはそんなところだ。 「次の浜」とはその親不知周辺にあるのだが、そこは文字どおり天嶮、道は進むにしたがって険しくなる。そしてここは北陸道、日本の背骨に当たる重要な幹線道路だ。夜とはいえ、いや夜だからこそ大型車が多い。 脇道、側道は存在しない。ついでにいうと歩道も無い。高速道路のような一本道が続く。一本道は山に穴をあけ、谷に橋を渡す。トラックは追いたてる。そのたびに橋は大きく振動する。サイドバックはトンネルの壁をこする。さらにトラックが迫る。 あたりはまっくらで、右手の日本海は更に暗い。ただ対向車のヘッドランプだけがまぶしい。 いくらこいでも次の集落へたどり着かない。この暗闇の出口がわからず、次の浜を見ろとしてしまったようだ。 車線が広がった駐車スペースのようなところがあって、ベンチと展望台のようなものが設置されている。 走行距離:53.5km (合計508.0km) 8月12日 6日目このような場所でも少しは休めたのだろう。朝がきた。
「シャッター押しましょうか」 それをきっかけに老夫婦とお話をした。滋賀県在住の方で、うちのそばにきたら泊りにこいと住所を教えてくれた。その上食料、飲み物まで頂いた。 やはり明るくなると余裕が出る。琵琶湖のおじちゃんのアドバイスも受けて道の真ん中をすすむ。 雨があがり、出発する。明るくなって、無事難所を抜けることができた。 (矢の如く砥の如し) 前方に2台、自転車が走っている。抜きつ抜かれつしているうちに、休憩所で一緒になった。中学生くらいの兄弟で、実家のある秋田から祖母の待つ能登中島まで行くという。随分なペースで、まだ2泊しかしていないらしい。ほとんど一晩中走るようなかんじだ。 彼らは今日中に到着したいらしく、まじめによくこぐ。 そして夕方、僕はこのあたりをゆっくり見物しようと思い、富山市にてこの兄弟に別れを告げた。 さぁこれからどうしようか。
判断するための情報を集めなくてはならない。大きな本屋を見つけ、立ち読みをする。京都まで行こうか。琵琶湖のおじさんにお世話になるか。松本まではきつそうだ。 往路での山ごえに懲りたので、比較的高低差の少ない高山から太平洋まわりと、琵琶湖から那智勝浦フェリーまわりを有力候補として考えておくことにした。 河口から広がる広い砂浜にて就寝。 走行距離:81.6km (合計589.6km) 8月13日 7日目この季節、バイクでツーリングに出ている人も多い。この砂浜にもそんな人がテントをはっていたりする。 日が昇り出すと人々は活動を始める。 この日は犬の散歩をしていたおじさんと長話をした。彼は長距離ドライバーをしていたらしく、道のことに詳しい。
「あぁ良いところだよ。」 その何もないところを目指して、海ぞいに走っていこう。
新湊市の港。昔は浜名湖のように海とは独立していたが、港にするために海岸線の細い陸地を切り開いたという。現在では断絶した道の代りに小さなフェリーが市民の足となっている。 そうだ思いだした。金沢に高校の同級生がすんでいる。一日くらい世話になろうか。しかし連絡先を控えていない。ウェブ上には控えてあるのでインターネットが使えれば良いのだが。 地元の中学生くらいの男女が楽しそうに騒いでいたのを覚えている。 高校の同級生に連絡をすると、入れ違いで東京へ帰ってしまっていた。
更に北上。 あぁ随分遠くまできたなぁ。東の空は雲に覆われ、北アルプス連峰は隠されている。 今日はまた釣りでもしたいところなのだが、釣り具屋が見つからない。それどころか普通のお店もほとんどない。食料が乏しいのだが…。 崎山半島への分岐を、国道とは別れて海ぞいに進む。お店どころか、民家も少なくなる。 このような場所で日が暮れた。 気がつくと大雨だ。防波堤の上で、知らないうちに眠っていた。この夜もなかなか大変な夜で、8月といえど濡れた体は結構辛い。あわてて荷物をまとめたものの、付近は前述のとおり、田んぼしかない。しかたなく逃げ込んだのは農家の納屋だ。 夜が白み始める。 走行距離:100.9km (合計690.5km) |