ニース−カンヌ−ル トライヤ

ニースの海は青い。
コートダジュール、空色の海岸線という名前がついている。青いと言っても小笠原の宝石のようなすきとおる青とも違う。もっと乳白色の、それこそ油絵で見たことのあるようなパステル調の水色だ。絵には疎いのでゴッホだかゴーギャンだかルノワールだかは分からないが、ああいった絵画はかなり写実的で、確かにこの景色を絵画にするならばあのようになるはずだと妙に納得してしまう。

海岸線は長きにわたって海水浴場となっていて、たくさんの人が昼寝して水遊びしている。これだけ人が多いのに、ごみは少ない。実際に泳いでみると、意外に急深だったが、透明度はよくない。それほど冷たくなく、気持ちいい。

まずは市場へ行った。行ったと言うよりは、狭い路地をうろうろしていたら周りが市場になった。
確かにヨーロッパの街かどは首尾一貫しているようで、旧市街の狭い路地裏は大変風情がある。多分数百年前とそれほど変わってない景観なのだと思う。日本でもぽんと町行ったときなんて面白く感じたが、こちらはもっとさりげなく、テーマパーク的でない。路地裏のさらに路地に入っても、一貫して昔のままだ。
海のそばの市場で、果物買って食べた。



アンティープの旧市街。港全体が城壁に囲まれた町。

フランスはあるいはヨーロッパ全体的なのかもしれないが、何だか自転車がすごく尊重されているようだ。
日本で自転車こいでいると、たいていの場合後ろの車はむきになって追いぬきをかけてくる。目の前の赤信号までのわずかな距離でも、自転車に前を行かせるのが罪であるかのように無理に追いぬきをかけてくる車は珍しくない。(ときにはクラクションを鳴らしながら)
しかしこちらの道では、こちらが恐縮してしまうくらい自転車が尊重されている。反対車線は渋滞していて、こちら側の車線は僕が先頭、ちょっと流れを悪くしているかなと思うようなときでも、後ろの車はイライラしている様子もなく、静かについてくる。
よほど余裕があるときでないと追いぬきをかけてこない。別に僕に対してだけとか、たまたま優しいドライバーだったというわけでなく、どうもそれが常識となっているようだ。

今日の寝床。
カンヌを過ぎて(素通り。ビーチは混んでるし映画も興味ないし。)しばらく行くと、道はレステエル山塊というリアス式海岸のようなところに入る。道が高みに登れば、ニースからカンヌまでの海岸線を一望できる。
このあたりのキャンプ場を探すが、なかなか見つからない。あるいは地形が険しいため、そんなものを作る余裕がなかったのかもしれない。インフォメーションで地図をもらってこなかったのは失敗だった。
もう走りたくねぇよと思ったころについたのがル トロイヤ。観光案内版によるとこの村にキャンプ場はないようだが、ユースホステルはある。そこの裏庭でテントをはることにした。(別に突飛なことをしているわけではない。ちゃんとそういう料金設定もある。)
しかしユースホステルにつくまでが長い。昨日もそうだったが、ユースホステルは小高い丘の上にあって、もうへとへとなのにかなりな急勾配を登る必要がある。そのかわり景色は良いのだが。
こっちの人って丘の上にすむのが好きなのだろうか。今塩野七生を読んでるからそう思うのかもしれないが、このへんの人はのんきに盆地にでも住んでいると、たちまち蛮族に襲われるということなのかもしれない。
この国では水と平和に加え、便所まで有料で、小銭がなくて小便するのに苦労した。

(2004 8/8)