到着

僕と僕の自転車とその他の有象無象を乗せたこの飛行機は、パリまで11時間程度で着いてしまうらしい。東海汽船乗って八丈島まで行くのとあまり変わらない。パリも近いもんだ。
エールフランスのAF275便。お盆休みの直行便ということで、何しろ高かった。25万円より30万円に近い。閑散期の2、3倍するのだろうが、しかたがない。高いからといってやりたいことを中止するのは、精神衛生上よろしくない。まぁサラリーマンになったということなのだろう。

エコノミークラス11時間の旅は、2等船室11時間の旅と比べてどうなのだろう。
どちらも酒飲んで眠っていれば着いてしまうというのは同じだ。スシ詰めにされているというのも同じだが、エコノミークラスのほうではデッキを走りまわることや、潮風に当たることもできない。窓側ではないため、地上の風景に興じることもままならない。お酒が無料で液晶テレビがついていて、船酔いの危険性は少ないとは言え、旅としては2等船室のほうが魅力的ではないだろうか。

地球の回転にあわせて移動しているため、窓の外はずっと昼間だが、日本時間では21時である。だいぶお腹がすいてきた。
12:30に出発して、11時間かけて16:30に到着。ということは、もう少し飛行機の速度が上がれば、西周りの飛行機ならば出発した時間に到着するという現象も起こるわけだ。地球の回転をキャンセルして、夕日の時間に出発すれば夕焼け空を眺めつづけられる。夜明け前に出発し、ずっと飛びつづければ、明けない夜となってしまう。
現在時速1000km弱で移動しているが、地球の自転速度はそれより速いということか。飛行機も速いが、地球も速い。


定刻どおりパリに着き、ニース行きへ乗り替え。やっぱりスムーズにはいかない。
飛行機乗る前に荷物検査があるのだが、毎度の事ながらそれに引っ掛かる。ナイフやらコンロやらテントポールやら、それは醤油でそれは塩だと、アウトドア用品には疑われるものが目白押しである。3度にわたる追試の上、中国系のお兄さんが手を焼いてくれて何も捨てずには済んだ。
しかし成田にて預け荷物から機内持ち込みに変えたものの中に、クッキングセットが入っていたのは失敗だった。
刃渡り15cmのアジ切り包丁を持ち込んでしまった。
荷物チェックが厳しくなっているようで、成田でもカメラ三脚にまで目をつけられていたが、それ以外にもチェックしなければならないものがあったようだ。

ニースの空港からユースホステルまでは約10km。どうしようかと思ったが、何しろこのままでは荷物が多い。乗り物は人間を乗せて運ぶものであり、人間が乗り物を運ぶのは本末転倒である。ベルトコンベアから出てきた自転車をその場で組み立てる。
自転車が組みあがってしまえば、不安材料はなくなる。あとは今までやってきたのと同じように行動できるはずだ。

飛行機が着いたのは20:30だが、まだ日は暮れていない。東京の夏の、19時くらいの感覚だ。
異国の道を自転車で走るのは初めての経験だ。特にこれといった問題もなく、気持ちよく進む。
海ぞいにでると、さらに気持ちが良い。海岸線に広い歩道があって、観光客がうろうろ散歩している。夜景がきれいで、道の反対側にはスノビッシュな豪華ホテル。
投げ釣りしている人もいるが、キスでも釣れるのだろうか。


今日覚えたフランス語
Ou est auberge de jeunesse? (ウ エ オーベルジュドジュネス)
ユースホステルはどこですか?

途中まではカンでいけたのだが、地図を持たなかったため最後の100mで迷った。道端のおじさんに聞いてみると、親切に丁寧に教えてくれた。が、フランス語なのでおおざっぱな方向しか分からなかった。


ユースホステルの屋上から

(2004 8/7)