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自転車旅行記 自費出版
本のほうが読みやすいぞ

9月4日

自宅

午前5時。定刻どおり有明のフェリー埠頭に到着。ヨソ者はヨソ者の街に帰る。
あとは都内の移動など、ここまでの距離に比べればたいしたことはない。

僕は何のために旅に出たのだろうか。
僕のやったことといえば、毎日ご飯を食べて自転車こいで寝ただけだ。 大きなことをしたとか遠くにいったという気持ちはあまり感じない。 それでも改めて考えれば、やっぱり貴重な時間をすごしたのだと思う。
遠くにいった気がしないのはフェリーに乗ればすぐ帰れるからとか、どこまでいっても日本は日本だとかいうよりも、通過した場所すべてが目標地であり、日々少しずつ進んだからだと思う。

旅に出た理由を考えると、どこへでも行けて何でもできることを証明するためだとか、前に道があるからとか、自殺しないためとか、モニターから離れるとか、非日常を日常にするとか、まぁ色々挙げられる。 その中から一つだけ選ぶなら、おいしいご飯を食べてよく眠るためになるのではないだろうか。知らない町で寝るのはなかなか気持ちがいい。

旅をここで打ちきったのは例の世間のしがらみが段々無視できなくなりつつあるからだが、一ヶ月旅をして一通りのことはできたと思う。 釣りもやったし山にも登った。前回の旅には達成があり発見があったが、今回の旅には充実があった。

あと一週間あったなら?
鹿児島へいったかもしれないし、船宿泊まって沖釣りをしたかもしれない。

あと一月なら?
船で北陸行くのもいいし、国際航路で韓国という手もある。
しかしあと2,3日無理に伸ばしたところで、これまでのくり返しになるだけだ。

この旅の道中でもいくつかの選択をした。その捨てたほうの選択肢の中にも捨てるには惜しいようなものもあった。(紀伊半島とか、九重山とか)
しかしそちらの方を選んだら、僕が経験したものを経験できないはずであり、同時にどのパラレルワールドでも僕が今得ているのと同程度の満足感を得ていると思う。
まぁ人生は長い。行かなかった場所は宿題として残しておこう。


東京湾の朝

総走行距離2300km。すべて汗水たらして描いた道だ。
旅の途中、コンビニなどによると「またのご利用をお待ちしています」と声をかけられる。 一期一会という言葉があるが、その中のほとんどにはもう2度と行く機会は無いだろう。
同じように、2300kmの中で出会った人や道、風景にはもう2度と会うことはあるまい。その中のいくつかの記憶は、眠れぬ夜にふと思い出す事もあるかもしれないし、いくつかは一生忘れたままであるかもしれない。
だが、経験する事はもう2度とできない。再び旅に出られたとしても、それは別の旅だ。今回の旅は、一回限りの経験だ。

旅の気分と空気感をいつの日かまた思い出すために、このページを作った。 毎日それなりにちゃんと更新できたが、一方で色々と書き忘れたことがあるのではないかという不安も感じる。

遠足の終わりはお家につくまでだと相場が決まっているが、この旅の終わりはこのページを完成させたときだと思っている。それは始まりが出発のときではなく、計画を始めたときだと考えるのに対応している。
これから写真を増やして自分でも読み返してみる。一つの作品として完成させたい。
次回の事を考えるのはそれからだ。

(2002年9月4日 記)

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本日の走行距離 31.36km
使用金額 420円
(うちわけ 食費 420円)