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自転車旅行記 自費出版
本のほうが読みやすいぞ

8月14日

頂上を目指す

行程

徳島-貞光-見ノ越


8/14:赤 全体図


夏といえば海。というわけでこれまで海に沿って走ってきた。
夏といえば山。したがって本日は西日本第2位の高峰、剣山を目指す。自転車旅行の途中で山に登るというのは、これまでにやり残してきたものの一つだ。

午前中は貞光までの約50kmを吉野川に沿って走る。順調。

そこから国道438号に入る。渓谷ぞいの峡道だ。
雨がふり、あがる。また雨がふり、あがる。右手の渓谷は深い緑色だ。顔を洗いに降りていくと、無数のメダカが泳いでいた。
 

小さな食堂で昼食をとる。店というより遠い親戚の家に通されたようで、人のよさそうな店主に、うちはうどんしかできんわという意のことを告げられた。いつもは近所の住民しかこないのだろう。

旅をしていると人に親切にされることが多いが、こちらから親切にされにいく場合がある。
トンネルをこえて一宇村に入ったところで雨が強くなってきた。雨宿りをしようと製材所にとびこむ。
と、中では家族がバーベキューをしていた。隣の川で取れたイワナをはじめ、ビールや焼肉をごちそうになってしまった。

詳しい家族関係は難しかったが、自分の家族を持った子供たちが、お盆で田舎に帰ってきて十数名の大宴会だ。
その主人の言葉。「嫁をもらうときはその母親の顔を見ろ
いつまでも美人かどうかがわかるそうだ。これから嫁をもらう人は覚えておこう。

ごちそうさまでした。雨があがり、出発。相変わらず貞光川にそった道だ。

C2H5OH + 3 O2 = 2 CO2 + 3 H2O + Q [J]

さきほどいただいたビールがすぐさま分解されてATPとなり、僕のからだの運動エネルギーとなる。そのエネルギーは一部は汗として流れていくものの、確実に位置エネルギーをあげることに使われる。
そんなことを考えて気を紛らす。

仕事=力×距離
僕は24歳にもなっていまだに働いていないが、物理学的には今確実に仕事をしている。

本格的な登りが始まる。ここまでの60kmで標高は500mほどあげたが、残りの20kmで900mをあげなくてはならない。まだ2時半であるが、今日中に頂上まで到着することはできるだろうか。

途中、対抗車のおじさんが「あめいらんかー」と声をかけてくれた。 このつらい登りのうちの標高100m分はこのときもらったミルクキャラメルによるものだ。

いちいち車を止めてまで親切にしてくれる人は少ない。一人がこのような行動をとってくれると、無言で僕のことを追い抜いていくほかの車も、行動にはあらわさなくても僕のことを応援してくれてるのではないかと想像できるようになる。  

急登は続く。登り坂では距離を基準にするよりも標高差を基準に考えるのが正しく、わずか数km進むのに30分、1時間かかる。覚悟して登っているので精神的な辛さは少ないが、肉体としては大変きつい。旅の期間、いくらか体重は落ち、さらに今これほど汗をかいて軽くなっているはずなのに、体がズンと重い。

こりゃもう今日中に頂上までは無理だと覚悟したころ、ようやく急登はおわり尾根道に出る。雲は低く流れ展望はきかないが、時折太陽は顔を覗かせる。

「苦労すればするほど頂上に出たときの喜びは大きい」というのは無駄な努力をしたものの使う方便か否か。疲れた頭で考えていると、湖畔に立つこぎれいなホテルの前に出た。
外来入浴の時間は終わってますけどまぁいいですよ、ということで入浴。

とろける。
口からは感嘆詞しかでてこない。 山の夜は気温・湿度ともに低く、熱くなった体も急激に寒さを感じるようになるが、もうこれで大丈夫。

入浴後、少し下って剣山への登山口。数軒の民宿がある。そのうちの一軒で食事後、駐車場の裏にテントをはらせてもらう。

(2002年8月15日 記)

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本日の走行距離 88.31km
使用金額 3045円
(うちわけ 食費 2545円 入浴 500円)


本日の写真



夫婦池
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