長い1日

山と並び、島も我々のフィールドだ。
ヨーロッパの離党も見ておきたい、ということで手頃なサイズのよさげな島を見つけた。

Isola del Giglio、ジリオ島というのがそれだ。
伊豆諸島で言うと、神津島くらいの大きさなんじゃないかな。なんでもビーチがきれいらしい。

朝食後、9時ごろにホテルを出てバスに乗る。毎回バスのチケットはどこで買ったらよいのかよく分からない。
タバコ屋で買うシステムになってるらしいが、近くにタバコ屋が無いバス停もある。時刻表もあったり無かったり、よくわからないのだが、この路線は20分に1本くらいは出ているのかな。
まぁ、しばらく待てばバスに乗れ、やや渋滞しながらもポルトサンステファノ到着。
ねらっていた10時発の船にどんどん人が乗り込んでいる。

乗せてくれいと走ったが、どうやら満席らしい。が、次の船は30分後。チケットを買い、それに乗る。
ジリオ島への船便は2社運行しているが、HPの最新情報にこの便は書いていなかった。
まぁ、何はともあれ都合は良い。本土に帰る最終便も、HPの情報より遅い便があり、万事好都合だ。



ポルトサンステファノは雰囲気のある港町。
高い宿しか見つからなかったので避けたが、こちらに泊まった方が楽しかったかもなぁ。頑張って民宿でも探せばよかった。

出航。ちょうど1時間の短いクルーズ。
人は満載。みな脱ぎだす。

島の半分以上の宿に問い合わせたが、残念ながらジリオ島の宿泊はとれず。
サマーシーズンは3日以上というところも多いようだ。
まぁ、アクセスも悪くない。日帰りでも楽しめるだろう。


島到着。
いつになく効率的に動く。
2社の時刻表を調べ、帰りのチケットを購入、バスの時刻表も調べ、インフォメーションで地図も貰う。

バス路線は、基本的に20分間隔。昼休みは本数が減る。バス停は3つで、港のある町、山の上の城のある町、反対側の海岸の町を巡回する。
反対側の海岸がきれいなようなので、そこに行ってみることにする。
うまくいけば、帰りに城に寄って、そこから歩いて帰ろう。


世界には行列を作れる民族と作れない民族があり、イタリア人は後者のようだ。
バスはすごい混んでいる。その混雑の中で食べかけのジェラードを落とし、世界の終わりのような悲鳴を上げてしまった。
ジェラードはカップのほうが善いかも。

ビーチは混んでいた。ヨーロッパ人は肌を焼くのが好きなようだからな。

隣の岩場のほうが空いているし、面白そうだ。
しばらく泳ぐ。

イタリアって実はけっこう緯度が高く、北海道と同じくらいだ。水はそこそこ冷たいが、日差しが強いので丁度いいくらいだ。
確かに海はきれいだが、魚の数や種類なんかは伊豆諸島のほうが多い。イサキの子供みたいなやつが少しいたかな。


一泳ぎしたあとは、飛び込んで遊ぶ。
居合わせたイタリア人の兄ちゃんがアドバイスしてくれた。




海辺のレストランで遅い昼食。
これが素晴らしかった。今回の旅行の最高ランク。

なんだハムかよ、魚介にすれば良かったと思ったら、これが白身魚の燻製だった。




バスに乗って城へ。
ここは、割と現役に人が住んでいる。建物自体は中世のころのものに見えるが。
天守閣も住居のようだ。(立ち入り禁止になってる)まだ現役城主が居るのだろうか?

2,3日滞在するなら、歩いて丁度良さそうなサイズで、遊歩道もそこそこ整備されているようだ。
日帰りじゃそう歩いていられないが、城から港まで下山するくらいは歩こう。
海を見ながらの気持ち良い道だ。


ショートカットを狙ってあぜ道に入った。このルートを通った初めての日本人、ってことにならないだろうか。

島滞在の〆はやっぱりジェラード。
行きのバスで忘れたイタリア会話本もギリギリで回収でき、すべてがうまくいったジリオ島滞在だった。

帰りもすげー混雑。



我々デコボコ夫婦が、こんなに効率的にことを進められるはずも無い。うまくいったあとは、帳尻を合わせる必要がある。
ということで、このあとがだいぶ大変だった。

今日の宿はローマ。
これからホテルに寄って荷物を回収し、オステッロから電車でローマへ向かう。
オステッロまですごく順調に行けば19時45分の普通列車でローマへいける。が、これはさすがに間に合わないだろう。その次の特急が20時30ごろにあるから、それに乗れれば良いか。

駅まではバスで行くかタクシーを使うか。ホテルまでも歩く距離ではないので、バスの場合は2回使うことになる。
港にいたタクシーに駅までの運賃を聞いてみると、30ユーロ。バスで行くと二人で10ユーロもしないので、一瞬で妻に却下される。(彼女は高速やタクシーよりも、鈍行や自分の足の信者である)

まぁ良いかとバス停探し、10分も待てばバスが来る。
ホテルに戻って荷物を回収。ここまではとりあえず順調。
しかし、フロントの人の話では我々が乗ろうとする電車に間に合うバスは、もう無いらしい。思ってたよりもバスの本数は少ないようだ。
仕方が無い。タクシー呼んでもらおうと思っても、タクシーも手配失敗。間に合わないらしい。

そんじゃあどうしようか。
終電はもう1本あって、22時発でローマ着が24時。今回の旅行は、かなり治安の良い田舎ばかり行っていたが、よりによって最も治安の悪いローマに深夜着。あまり嬉しくない。

あまり方針も決まらないまま、とりあえずバス停へ行く。すごく順調に行けば、もしかしたら特急に間に合うかもしれない。

バス停で待つこと20分ほど。これで特急に間に合わなくなることは確定。
で、バスが来たのは良いものの、なんとバス停素通り。慌てて追いかけると、隣のバス停で乗客を下ろしている。まってくれーい。
が、無情にもバスはそのまま行ってしまう。スタートダッシュが遅かったか。

さて。どうしてたものか。
時刻は20時30分。昼間1日たっぷり遊んで、非常に疲れている。イタリアの太陽も、さすがに沈んでいった。軽食食べて、さっさと眠りにつきたいのだが。

ローマ行きの最終電車は22時発。あとはこれに乗るしかない。
来るときは、バスで10分程度だったが、信号もない1本道。駅まで5,6km程度だろうか。
バスはもう1本ほどあるようだが、どれくらい待つか分からないし、また素通りされるかもしれない。

こういう時に必要なのは、冷静になることだ。
が、我々の出した結論は、「駅まで歩く」
まぁ、困ったときに自分の体力に頼るのもそれほど悪くはないし、判断ミスがあると大変に苦労するということを身体で覚えるのも今後の勉強になるだろう。

歩き始めたら、そりゃあやっぱり疲れる。
荷物もけっこう重い。昔は海だったという、砂州の上に作った一本道を車に追い立てながら歩く。
道も分からない深夜のローマでうろうろするよりも、オステッロに引き返して宿を見つけたほうが良かったか?いや、シーズン中の海沿いは空き部屋を探すのはただでさえ困難なのに、今はもう夜だ。他の宿を探すにしても、海沿いを避けたほうが良い気がする。

けっこう歩いたのに、まだ駅は見えないなぁというころ、次のバスに追いつかれる。
今度は素通りはさせじ。素通りするなら俺を轢け、くらいな感じで路側帯から出て、今度は無事に乗車可能。

駅に着いたら着いたで、タバコ屋は閉まってるはトイレは閉まってるは、唯一空いているのがおつりのでないという券売機。どうすることもできないが、とりあえず終電には間に合ったようだ。



喉が渇いた。が、水ですら入手できず。
唯一手元にある飲料が、高級ワインのブルネッロ。
きっぷは陽気な車掌さん捕まえて、片言で事情を話すと追加料金なしで購入できた。

最後にして最大の関門は駅からホテルへの道。
ホテルの住所は分かるが、詳細は調べ損ねた。詳しい地図も無い。パンテオンの近くというのが大雑把な位置だが、中央駅から荷物もって歩く距離ではないんだよなぁ。

となると今度こそタクシー頼みということになるが、ローマのタクシーのガラの悪さは有名だ。
はたして、タクシー乗り場に行ってみると、明らかに怪しいおっさんが客待ちして声をかけてくる。タイムボカンのやられ役みたいな、いかにもな小悪党のように見える。
しかしここはタクシー乗り場だし、こちらには他に選択肢もない。ホテルの住所を見せると、OKOK、みたいなことを云い、二人組のおっちゃんたちは、じゃあ俺行くわ、という感じに話がまとまったようだ。

身ぐるみはがされることもなかろう、ままよ、と乗り込むと、分かりやすくすごく怪しい。やたらと飛ばすは曲がるは、明らかに遠回りをして、混乱させようとしている。
メーターはうなぎのぼり。10mおきに回る。シフトチェンジのたびにメーターを操作している感じがする。

うわやってくれるなこのおっさん。
ほら俺正しい道行ってるだろと、ローマの地図を渡された。まぁ最悪、この地図見ながらホテル探せるか。

メーターが20ユーロを過ぎたあたりで、「現金は30ユーロしかない。それ以上は渡さないよ」的なことを告げる。
財布に30ユーロ入っていたよな。タクシーの相場は分からないが、ぼったくられるにしても深夜タクシーで3000円なら笑って済ませられる。

OKOKとあっさり認めたから、まぁそれなりにボッタクリ価格なのだと思う。
その後、メーターの速度は遅くなり、30ユーロを越えたところで確認したら、今度はメーター止めてきた。何のためのメーターなんだ。

あれがベネチア広場だ、ショッピング通りだ、なんて解説を入れ、やはり猛スピードで路地に入る。ぐるっと回って、同じ路地にもう一度入る。
まぁ念の入ったごまかしよう。
そののち、「これがお前の指定した住所だ」と、何だか小さな路地で下ろされる。

やっぱりテキトーなところで下ろされたか。とりあえず身ぐるみはがされることは無かったな。じゃあホテル探すか。
と、路地の住所を見たら、意外なことにホテルの住所だ。あのおっさん、ぼったくりだったが仕事もやったのか。

ホテルの入り口も分かりにくく、2度3度往復した後に、歴史のある雑居ビルの案内に小さくホテルの名前を発見。これでなんとか今日のベッドまで到着。
長い一日だった。



外観に反し、中は普通に快適なホテル。
ミニバーが何より嬉しい。
ビールとコーラの一気飲みで渇きを癒す。


●今日の行程:
オルベッテーロ−ポルトサンステファノ−ジリオ島−オルベッテーロ−ローマ

(2011/8/17)