南アルプス
鳳凰三山
ほうおうさんざん

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2005年 11月12日−11月13日

積雪期の鳳凰山、というのがかねてからの一つの目標だ。
鳳凰山は好きな山だ。僕にとってはじめて森林限界を越えた山、雲海の上に出ることを味わった山だ。本邦二位の北岳を間近に見上げ、富 士をほどよい距離に望み、甲府盆地を見下ろせる展望の山だ。 いきなり厳冬季、積雪期に挑戦するというのも大変だろう。まずは初雪の降ったころ、小屋も道も閉ざされる前に登っておこうと思う。

0630 起床。雨、眠い。部屋も散らかっているが、山から帰ったら片付ける暇はない。山行くのを面倒に思う。雪もあるの だろうし。
とりあえず情報収集。この雨はすぐにあがり、その後きれいに晴れるらしいので山行を決定。だが空が暗いと気分が盛りあがらない。

0730 最寄り駅を出発。中央線は高速バスと競合しているため回数券の割引率が高いが、韮崎までならば、正規料金とあま り変わらないようだ。

0830 八王子で特急に乗り替え西へ向かう。晴の区域に突入。空が青く広がり、山間に雲が沸く。紅葉している。

0945 韮崎着。ここから青木鉱泉行きのバスに乗るつもりだが、乗り場は分かりにくい。それは良いとして、乗り場に着い てみると1日3本のバスは10分ほど前の時間だ。さらに、青き鉱泉までのバスがあるのは10月一杯までだった。 要するに、時間も季節もあっていない。出発前に時刻表は一応調べているのだが、いったい何を調べたんだろう。

0955 しかたがないのでタクシーを利用。その前に、駅ビルのパン屋があまりにも香ばしい。神戸屋のシュークリーム10 5円うまし。
タクシーは案内によると6000円前後。バスだって登山口まで行くには2000円前後かかるのだから、複数で行く場合には時刻表を気に せず使えるタクシーはリーズナブルである。一人で行く僕の場合は、今まで絶対に公共の交通期間を利用したきたが、今回はタクシーを使 うほかない。山登りにタクシー利用するのは初めてだと思う。 今後冬季の登山を目指すのであれば、タクシーの利用も考えないとなぁ。冬になるとバスはなくなっちまうし、山登って星の写真とって、 下山して高速を運転するのはかなり恐い。

1100 今回利用しようと思っているのは中道と呼ばれるルート。青木鉱泉からは30分ほど林道を歩くだが、せっかくのタ クシーなので林道終点までお願いする。この時期、日没まで余裕はない。30分の短縮は大きい。
途中からタクシーのおっちゃんがチャレンジング。もうちょと上まで行けそうな林道が続いていたのでそこを登る。おっちゃんにとっても 初めての道で、途中からはメーターをきって一律7000円。結局砂防ダムの工事のお兄ちゃんに道を聞いて引き返し、林道終点へ。20 分ほどのロスだろうか。試みは失敗したが、おっちゃんの判断は読図能力に自信のある僕から見てもリーズナブル。30分の短縮が10分 ほどになったが、しかたがない。

1115 登山開始。
中道は急ながら単調な道。今日の紅葉のピークは登山口のちょっと下、標高1000mほど。 カラマツの黄金色が目を引く。カラマツは普通に言えば茶色とかオレンジ色といった風情だが、日光を浴びるととても美しい。モニジやナ ナカマドの紅のような鮮やかさ、はなやかさではないが、彩度に劣るぶん光り輝くともっと高尚で落ち着いた雰囲気だ。そういうものが道 の両脇に広がる。
頂上、小屋までは4〜6時間。短い距離ではない。だが逆に、そういう覚悟ができる。2,3時間の道のりを「すぐ着くな」と思いながら も意外と時間がかかるよりも精神的に楽かもしれない。 登りいっぺんとうだが、道はしっかりしていて歩きやすい。じゅうたんのようにフカフカした落ち葉の上を歩く。標高もどんどん稼げる。

ペースができてくると、頭がぼーっとしてくる。脳味噌の6割くらいは多分眠っている。残りの2割が道や状況の判断をし、2割でとり とめのないことを考えつづける。とりとめのないことを5、6時間考えつづける。寝付きの悪い夜の、布団の中の状態に近い。

途中、標高1700mほどのところで林道終点付近と合流。車が2台止まっている。タクシーのおっちゃんとここまで来れたという可能 性もあったわけだ。僕は山へ歩きにきたのだから別にかまわんが。 山頂に至るまで、すれちがった人間は4人。その中の一人は小屋の人のようで、「この時間でこの場所は遅めですよ。今日は救助に行ける 人いないので気を着けてください」と心配され、不安を感じる。 いや大丈夫、多分起こり得るほとんどの状況が想定できていると思うし、想定した状況は最悪の場合でも一人で対処できるはず。それに日 没前に到着できると思う。

雪はそれほどない。標高2300mくらいのところから現れたが、うっすらと地表を覆うのみ。昨夜に降ったもののようだ。歩行の障害 となるほどではない。

1600 薬師岳頂上。標高2780m、れっきとした高山だ。それなのに山頂のちょっとしたまで樹林帯となっている。 登高中、基本的には曇っていた。あまり明るくない森の中、落ち着いてはいるがモノクロの世界を歩いていた。それが頂上に着くととたん に色鮮やかな夕焼けの世界。たった5分ほどで世界が変わる。
急に晴れ上がったわけではなく、風などの影響で山の東側に雲ができており、僕はその中を上ってきたのだろう。多分麓の甲府盆地、この 山脈の稜線から西はずっと晴れていた。が、登っている最中の雲の中にいる身からはそんなこと分からない。今日の夕日はだめそうだと思 っていた。この状況は予報どおりだし、登る前に見た青空から、雲があるのは一部で、大局的にはすぐに晴れることも分かっていた。が、 どうしても自分の目で見える世界の方を重要視してしまう。

1615 薬師小屋は薬師岳の直下5分ほどのところ。生まれて始めて泊まった山小屋がここだ。6,7年前になる。自炊、寝 袋持参で3600円。手続きをして、再び山頂へ。夕日。

1630−2100 撮影、食事。
気温は氷点を何度か下回る程度だろうが、風が強いためとても寒い。少しでも肌を露出させると、寒いというよりもダメージを食らうとい ったほうが正確だ。 今日の宿泊者は10人弱。その中に、僕と同じように星の写真を撮るおじさんがいた。 何度か三脚が風に倒される。現在使っているものは足が大きく広がらず、図体の割に安定性良くないんだよな。 0300-0630 睡眠をとり、月が沈むころからまた撮り始める。今回はフィルムカメラのOM-1と、会社で借りたNikonのD70を持ってき た。NIkonのデジカメの方は広角レンズを持ってこなかったのと、長時間露光の操作性が悪かったため(慣れの問題もあるが。全体的には良 いカメラだと思う)、オリンパスのほうをメインに使った。 レリーズきって小屋へ逃げかえり、しばらくのちにシャッタを閉じにいって1枚終了。その間で三脚が倒れたり、ヘッドランプつけたおじさ んがレンズをのぞき込んだりすると失敗。何にせよ、小屋が側にあるのはありがたい。 一日のうちで一番きれいな時間を迎え、やがて日が昇る。


0838 朝食、支度を終え小屋を発つ。

0915 鳳凰三山の最高峰、観音岳。この界隈は多少登山者がいた。半分以上、立派なカメラを持っている。

1030−1110 鳳凰山のシンボル、地蔵岳。山頂の標識はオベリスク直下の按部にあって、展望が良いわけではない。
オベリスクは山歩きというより岩登りの領域だが、見たところ結構登れそうだ。様子を見ながら行ってみる。 急峻な岩峰で高度感があるが、次の一歩が簡単に出る。思ったよりもいける。ズンズン登って最後の大岩、ロープがかかっている手前で次 のてがかりが出なくなる。 まぁ良い。ここまでだ。軽い気持ちでふらっと登るのはふさわしくない気がする。ここを初登頂したウエストン卿は、下山後村人に神様と して祭られそうになったという話を聞いたことがあるが、それと肩を並べるのも恐れ多い。さっきから誰もとおらず、一人で登っていると いうこともあるし。


あと一歩

1150 色々と噂の絶えない鳳凰小屋。 この小屋から青木鉱泉へ向かう沢筋のコース、御座石鉱泉へと向かう尾根道と分かれるが、御座石鉱泉のほうはこの小屋と同じ経営者らし い。そのため小屋の主人は御座石鉱泉のほうにおりて欲しいらしく、「沢筋は危ない、尾根道のほうが楽で面白い」などとアドバイスする 。こう書いてみると何だか他愛ないが、誹謗中傷するということで、ネットで検索すると色々不満が出ている。僕も今回も言われたし、6 年前もそう言われた。言われているほど悪意のあるいい方ではなかったが。 確かに、登山者にとって山小屋の主人のアドバイスはとても重い。そんな人に偽りの情報、行動を強制するような言い方をされるのは問題 である。 帰りに乗ったタクシーのおっちゃんも、「嘘などつかずに、こっちの温泉は兄弟がやっています、よろしければどうぞと割引券の一つでも 渡せば良いのに」といっていた。そのとおりだ。


薬師小屋に張ってあった、「観光地の良否について」と題された張り紙。
これを読んだだけなら、何を言っているか分からないが・・・

1200 沢筋のコースをとる。こちらの道は適度な間隔で滝があり、歩くときの目標にしやすい。

1220 五色の滝の滝。商売敵の小屋の主人も「ドンドコ沢コースには五色の滝というのがあるが、それだけだ」という形で 認めていたが、確かにすごい。疲れたので大休止。


落差数十mの滝壺は、だんだん凍りついている最中だ。

1550 青木鉱泉着。疲れた。相乗りの望み絶望的。タクシー手配してもらい入浴。

1630 温泉で心身ともにとろとろになったところにタクシー到来。思考力の停止した頭で雑談。 タクシーは6310円。往復で13000円ほどとなる。今回はしかたがなかったが、一人で払うのは痛い。わざわざ寝袋かついで、小屋の宿泊料 1000円きりつめている意味、前夜特急券を求めてチケット屋を回った意味が薄れる。

1730 韮崎駅発。甲府で特急、八王子で横浜方面へ。意外と座れない。

2000 近所の中華料理屋で食事。生ビールと海鮮炒め。

2230 もう一度風呂はいって就寝。起きたら会社だ。


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