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ハンニバル | 安田 悠 |
1万8千の歩兵 2千の騎兵 20頭の象 | 自転車 自転車用バッグ テント・寝袋類 カメラ・レンズ・… 撮影済みフィルム・写真データ入りCF 三脚・小型手動赤道儀… ガスコンロ・鍋・包丁・調味料… 登山靴 衣類 雨具 海パン・シュノーケル … |
食費 | 雑貨 | 交通費 | ネット | みやげ | 宿 | 衣類 | 合計 |
266.24ユーロ | 60.55ユーロ | 133.45ユーロ | 20.9ユーロ | 132.4ユーロ | 277.3ユーロ | 40ユーロ | 930.84ユーロ |
29% | 7% | 14% | 2% | 14% | 30% | 4% | |
話相手が居ないかわりに日記を書いているのかもしれない。自転車漕ぎながらでも、常に何を書こうか頭の中に言葉を巡らせていたのではないかと思う。
そういう作業を続けていくことにより、トラブルが発生したときもやや冷静になれるのではないかとも思う。マルセイユで電車に乗り遅れたときも、パニックになりながらもさぁこれをどう書こうかなと考えていたりする。トリノでは本当にあせったが。
リアルタイムと言っても、あたりまえだが自転車漕ぎながら書いているわけでも、暴漢に殴られながら書いているわけでもない。食事中や就寝前など、その日に書くこともあれば3日間後くらいに思いだしながら書いている。
多少のタイムラグはあるが、そのときに考えたことを思いだしながら書いているつもりだ。自転車を漕いでいるときに考えた断片みたいなものを思い出し、とりあえずそれをPDAに打ち込む。それらを何とか前後がつながるようにきったりはったりして一日の日記とする。
そういった断片は忘れてしまわないようになるべく早く打ち込むが、全体の編集がまだのもの、途中で筆がとまったしまうもの、まだ書き足りないものなどが2,3日分たまる。
したがって、自転車を盗られてしまったあとで峠から下りてくる部分を書いたりして、ややむなしい状況が生まれていた。
一日生活すると、かなり書きたいことができている。自転車こいでいることにより、かなり多くの情報を得ているのではないかと思う。50km、100kmと移動すると、多くの町、自然に触れることができるし、その間多くの判断をしていると思う。自転車こいでいるだけでは面白くないので、写真も撮るし、泳いだり山のぼったりもする。それらをすべてその日のうちに文章化するのは難しい。何とか眠る場所を確保し、夜になると疲れて眠る。あるいは星を見る。結果、更新が滞る。
更新はネットカフェで行った。毎回違うパソコンで行うのだから、それなりに大変だ。
しかし数年前よりも環境は良くなっており、Win2000以上が用いられていることが多い。それだと標準で日本語が使えるようで、やりやすい。
僕はPDAで日記書いてそのデータをCFを介してネットカフェのPCに送る。ネットカフェのキーボードで毎日打ち込んだほうがトラブルは少ないが、この分量をタイプするのは時間がかかるだろう。
CFカードはUSBでつなぐのだが、ここに問題が発生する。PC本体の手前にUSB端子が出ていれば良いのだが、古い端末は背面の、マウスが刺さっているようなところにUSBを差し込む必要がある。
ネットカフェのパソコンの裏側でゴソゴソやる必要があるわけだ。さらに、Win98だとドライバもインストールしなければならない。
当然かなり怪しい人である。こちらはトラブル起こさずに(PC上で)使う自信はあるのだが、店員から見れば要注意人物だろう。
見つかる前にやってしまうのがベストだが、何度か注意された。まぁ言葉がわからないふりをしたり(本当にわからないが)既成事実を作ってしまえばそれほど怒られなかったが。
結構大変なのだ。
確かに言葉がまったく通じなくても、宿も取れるし、料理を注文することはできる。すなわち生きていける。それぞれ相手はプロであり、こちらも何とかして伝えようと思えばわかってくれる。
しかし言葉がわからないと不利なことは多い。自分の好みを伝え、お薦めの料理を出してもらうことはできないし、トラブルがあったときに警察や周囲の人に状況を伝え、力を借りることが難しくなる。とっさに「会計」という単語が出ず、特に飲みたくもなかったコーヒーを薦められるまま注文してしまう。キャンプ場の朝、何か好意的に話しかけてくれているのだが、ただニコニコしているほかに手だてはなく、少しせつない。
英語は通じるか。
通じる人もいれば全然分からない人もいる。どちらかというと、若者はだいたい中学校の教科書程度の英語は話す。
ホテルや飲食店なら通じるかというと、僕の泊まるような安宿では必ずしも通じるわけではない。年配のおかみさんとかだと、娘を呼んできて通訳してもらうことなども多い。
彼らにとっても英語は外国語なのだ。
そんなときには、例えば道を聞くにしても、「Would you mind to tell me where the station is?」と聞くよりも、「Station,where?」
と単語羅列式で聞いたほうが効率が良い。宿をとる時だって、この英語なら伊豆の民宿のおばちゃんだってわかるだろうというような英語でたずねると良い。「1 night single,OK?」 ほらこれならあなたでも覚えられる。
イタリア語、フランス語だってこの要領だろう。
体系的な文法を勉強していないので細かいところは覚えられない。重要な単語をいくつか並べれば、おおざっぱには相手に伝わる。向こうも悟って同じような方式で会話してくれる。単語一つ覚えれば行動範囲が広がる。中間テストの点数が一点あがるのではなく、生活水準がちょっとあがる。そんな生活を続けていけば、だいぶ語学に堪能になれそうだ。
英語が分からない人に英語で聞いたって、どこかの国民のようにいきなり逃げるようなことはなかった。何かしら答えてくれる(僕の分からない言葉で)。あるいは、ジェスチャーで何か伝えてくれる。別に外国人なんて珍しくないらしく、そういうことに慣れているようだ。
キャンプ場がないときはどうするか。
都会ならば安宿を探す。ユースホステルがあれば良いが、なければ2つ星〜星なしのシングル。最初はロンリープラネットに載っているところからよさそうなところを探すが、見つからなければ片っぱしから声をかけていく。安宿も固まっていることが多いようだ。大体30〜40ユーロ。ユースと違い、タオルは置いてある。特に汚いということはなかったし、危険ということもないだろう。英語は通じないこともある。
郊外でなら野宿してしまう。今回はそういう状況は一度だけだったが、町と町の間では野宿する場所を見つけるのはそれほど難しくなさそうだ。現地の人々もけっこうやっている。一部、観光地や保護されているところでは、厳しく禁止されているところもあるようだ。
旅で自分の何かを表現しなくたって、他にいくらでもあるだろう。例えば特許書くことでも良いし、ソフト作ることでも良い。
しかし、うまく行きそうで大失敗した以上、このままで済ませるわけには行かない。今回の旅が大満足に終わっていたら、あるいはしばらくおとなしくなっていたかもしれない。しかしこうも見事に失敗した以上、次回はその分学習し、成功させる必要がある。
旅の規模、テーマ性、難易度、バラエティ、今回の旅は我ながらとても質の高いものだったと思うが、これに匹敵する、あるいはこれ以上のことができるかどうか。
地球は質量や体積において、僕よりも大きい。10の何乗倍だか知らないが、はるかに大きい。しかし地球の表面積と僕の行くことのできる範囲を比較すると、そこまでの差はない。せいぜい10の1乗倍だ。
大きい地球の広大な範囲のどこかが次回の候補地だ。僕の行くべきところなんて、いくらでも残っているはずだ。
次は北米横断か、中米空中遺跡か、南米の山脈か、あるいはモンゴル大草原か、アフリカ、ヨーロッパ、アジアか、…
(2004 8/25)
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