レッドセンター

赤い。
飛行機が高度を落としていき、通路側の席からでも見えるようになった大地は、赤く平たい。
いやこの地域はレッドセンターというくらいだから、そりゃそうなのだろうけど。

そのまったいらな大地に、一瞬エアーズロックが見えた。デカイ。
こりゃ確かに、分かりやすく異様だ。何も無い世界に、何の脈絡もなくどーんと存在している。

車のお話。
今回は、4WD車でないといけないところに行きたかった。ので、「空車はありません」という事態になると旅の根幹を変えなきゃいけなくなる。出発前に予約することにした。
まずはローカルの、スリフティ社。多分大手より割安だろう。日本ではナントカって旅行社が代理店やっていて、そこにメールしてお願いする。あえなく満車。そこで慌てて大手のAvisのウェブページから予約を入れた。すると自動返信メールみたいのが送られてきた。予約番号は書いてあるから良いのだろうけど、本当にこれで大丈夫なんだろうか、という状態で到着。

で、結果は、空港に着いて10分で、あっさり望みどおりの車が手に入った。簡単なもんだ。やっぱりインターネットって、国境に穴を開けていっているよな。

そして30分後にはキャンプ場に寝床確保。あっという間に心配ごとがなくなった。あとは夜になって星が出てくれれば良い。

ようやく時間に余裕ができて、しばらくはキャンプ場でぼーっとしたり、これからの計画立てたり。

最近では、エアーズロックという表記よりもアボリジニの言葉であるウルルっていう表記のほうが主流だ。僕もそっちのほうが良いと思うが、この文を読む人にウルルって言っても知らない人が多いだろうから、適当に混ぜながら記述する。
ちなみに、現在滞在しているのがユーラルーっていう集落。ウルル観光のために存在するリゾート村。
スペルはウルルがUluruでユーラルがYulara。Yularaはカタカナ表記が難しい。ユーララとかユーラルとか書かれている。というか、正確な発音知らない。ニュージーランドのマオリ族の発音は日本語と見分けがつかないくらい似ているが、アボリジニの言葉はどう読んだらいいものやら。町でもアボリジニの人見かけるが彼らは人種違うのだろうか。彼らはアジア系というよりもアフリカ系に見える。
ウルルの周りには、いくつかのトレッキングコースがある。
午後、その中の一つでも二つでも歩くつもりで出発。

日本の夏とは違い、カラッと風が心地好いから気付きにくい。が、やっぱりずいぶんと暑いようだ。
よく分からんが、40℃以上あるのかも知れない。
いろんなところに、「注意!水を持ってけ」って書いてある。僕は登山中なんか、人の半分くらいで水は足りる。そんなにたくさんいるのかよ、とも思ったが、確かにいるかもしれない。
しばらく歩いているとクラッとするし、そこで水を飲むととてもおいしい。
午後は特に気温が上がって、こりゃトレイル歩きに行くよりも日陰で昼寝しているほうが正しいな。


砂漠の漁サン

ウルルの前にインフォメーションセンターがあって、アボリジニによる説明が各国語で書かれている。
日本語もあるのだが、おそらく彼らに文章語の文化が無いためだろうか、非常に分かりにくい。
雰囲気として分かったのは、彼らは昔からこの土地で狩猟採集によって生活してきたこと、様々な食料を得るために必要な知識を代々伝承してきたこと(蜜アリというのがいて、その蟻の巣をほって食べるらしい。美味しそうだった)、大地の恵みに感謝していること、西洋人がやってきてこの地域を変えようとしていることに不満を持っていること、など。
今までと同様の収穫を今後も望む狩猟採集生活と、とにかく発展を目指す資本主義じゃ、目指すものが正反対だ。最初の衝突なんて、お互い相手が何言っているかも分からなかっただろうな。

確かに砂漠に対しての予想に反して、生き物は多種多様だ。
植物もまばらで背が低いものの、けっこう生えているし、何しろ虫は多い。鳥、 トカゲ、ウサギ、ディンゴ、大型の動物も数、種類ともに多いから、それを支えられる豊かな生物相があるわけだ。
アボリジニたちはその生物相から恩恵を受けて生活してきたのだから、ヨソ者がそれを荒らすと怒るだろうな。漁師さんたちが、自分のナワバリ荒らされると怒るもんな。


この周辺も完全にまったいらという訳ではなく、小さな起伏は多い。だから、エアーズロックもどこからでも見えるわけではなく、起伏の下に居ると見えない。町でもいくつかの起伏のてっぺんが展望台になっていて、そこに行って星を見た。



夜中、キャンプ場のシャワー浴びてテントに戻ると、野ウサギやディンゴがうろついているのを見た。
あとで気付いたが、食べかけのパンを持っていかれている。
片付けをちゃんとしないと、野生動物に怒られることになる。

(2007/11/17)