出航

全国でもっとも南北に長い都道府県はどこか。
答えは東京都。

沖合い遥か数百海里のところに、夢のような島があるという。
それが小笠原諸島。とりあえず普通の観光客として行けるのは、こちら方面では最南端だと思う。
小笠原諸島というと、天気予報では毎日聞いている。が、実際の遠さを実感することは少ない。たいてい小笠原の地図は画面端に切り取られているが、間を省略していない地図で見るとちょっとびっくりする。こんなところまで日本なのか。
東京からの距離は約1000km、500マイル。これを20ノット強の船足でいくので約25時間となる。東京から1000kmというと、国後島、ウラジオストーク、プサン、屋久島などと同程度の距離になる。
この地図はちょっと歪みがある

交通は船で行くより他にない。貨物線で行くというマニアックな手段もあるようだが、普通はおがさわら丸で行くことになる。
約25時間というと、以前乗った門司−東京間よりはだいぶ短いが、結構早いのだろうか。今後は高速船が就航するそうで、16時間で行けるようになるらしい。
ともあれ、沖縄や海外に比べ、アクセスは良くない。それもまた魅力の一つなのだろう。誰も行かないところに行くというのは、自慢できるとか人ごみにあわないで済むという魅力もあるだろうが、やはり自然が残されているという魅力が大きいだろう。
気軽に行けるような場所では、よほど気をつけていても自然は痛んでいくと思う。
小笠原はそういう方向に動くようだ。船内にあったリーフレットを読むと、島の一部では人数や入れる期間を管理しているらしい。これは登山家の野口健さんがやっている都レンジャーの活動なのだろうか。

出船は昼の10時、竹芝桟橋から。
今回は自転車旅行というニュアンスではないが、結局自転車を持っていくことにした。レンタルよりは輸送料のほうが安そうで、自分のもののほうが気安という程度の理由だ。
貨物に入れてもらうには30分前に手続きをしなければならないが、これに遅れてしまった。
聞いてみると、そのまま持ち込んでも良いとのことだが、係によっては、そんなことやってないよという人もいた。結局無事に乗せてくれたが、きちんと時間内に手続きをしたほうが安心だ。

現在横浜沖合いに来たところだ。家を出たときにはきれいな青ぞらだったが、一度雷雨があった。今は再び青ぞらが広がり始めている。
海はどうも荒れるらしい。東京湾内は穏やかでこのようにおかしつまみながら日記を書いたりしているが、この先は何もできなくなるだろう。外洋に出るまでに酒によってしまわなければ。
どうせ吐いてしまうのだから、おかしなど食べても意味がないというのと、酔ったときに吐くものがないともっと苦しいというのとではどちらが真実なのだろう。
実際問題としては、今手持ち無沙汰だから食べているというかんじで、別に先のことを考えて食べているわけではない。

久里浜沖を出てもうすぐ外洋だ。
船も揺れてきた。酒も回ってきた。そろそろ寝ないと。

(2004 4/28)


自転車旅行記 自費出版
本のほうが読みやすいぞ