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2010/10/2(土)

会社の上司が、昔から沢登りを愛好していて、飲み会のたびにその話をしてくれていた。いつか連れてってもらう話をしていたのが、ようやく実現。

沢登りというジャンルは、存在自体は知っている。
登山形態のバリエーションのひとつ、ロープを使いながら沢や滝を登って、途中でイワナ取ったりキノコ採ったりして、タープ使って焚き火しながら野営、というイメージ。 まぁあんまり撮影機材持って行けなさそうだし、そこまで大きな関心は持っていなかったが、一緒に行けるというのはたいへん良い機会だ。

大菩薩連嶺南端の展望の山、滝子山が今回のフィールド。南側のずみ沢(平ツ沢と書いてある案内もある)、西側の曲り沢を土、日で一つずつ登る計画。

07:00、予報よりもどんよりとした雲の下、駐車場を出発。登山道に入るや、すぐに橋のところから川へ降りる。具体的なルートや写真は、先輩の写真サイトに詳しいので、合わせて見てもらえると分かりやすいかと思う。
コースガイドは読んできたが、え、ここ降りちゃうんだというようなところ。あとはひたすら沢沿いを歩いていく。
登山道よりは歩きにくい。が、それほど歩きにくい訳ではない。とはいえ勿論道ではない。沢をまたぎ、右岸を歩いたり左岸を歩いたり、じゃぶじゃぶ川の中を歩いたり、歩きやすいところを歩いていく。

そうか沢登りはこういう場所歩いちゃうんだ。今までは沢を見ると、通れないところだとばかり思っていたが、濡れる覚悟さえあれば、道と同じなんだな。
沢靴にネオプレンのソックス(ダイビング用の靴みたいなやつ)という足回りは、覚悟していた不快感は全くなく、想像以上に快適だ。川の中をじゃぶじゃぶ歩いても、思ったよりも塗れないもので、せいぜい膝下までが浸かるくらい。

山登りの常識として、「道に迷っても沢沿いに降りるのは危険」というのがある。どこに滝があって行き詰まってしまうか分からないからだ。

そんなことにならないよう、登山道を外さないように歩くのも常識だ。 人が通るところは倒木も薮もなく、足場も踏み固められていて、簡単に歩けるし、その道をたどって行けば安全に目的地までたどり着ける。

そんな常識をだいぶ無視するのが沢登りだ。 しかるべき準備をして、道ではないところを歩いていく。

そりゃ僕も山登り始めて十余年、道ではない場所を登ってきたことは何度もある。踏跡ができるほど歩行者がいないところや、雪山だって無人島だってそうだ。
そういうところは足場が悪く、歩きにくい。沢登りも踏み歩かれていない場所を歩くので、登山道に比べれば足場は悪い。が、沢筋はヤブ道よりも歩きやすくできている。

そしてこれが面白い。非常に面白い。
景色がどんどん変わっていくのだ。肢体を伸ばして目の前の大岩をよっこらしょっと乗り越えると、美しい滝が目に飛び込んでくる。 水の流れは、その姿をどんどん変えていく。 流れが細くなれば水流は速まり、岩に遮られれば細く白い筋を幾重にも描き、流れが緩めば鏡のようによどむ。

「日本はどんな国ですか?」と聞かれたとしよう。
答えは色々あるだろうが、これからは一発、
「水の流れの美しい国です」と答えよう。日本の自然美は、世界のどの場所に劣らず、誇るべきものだと思っているが、その美しさは水の流れの美しさが一番象徴的だ。山の形や沖縄の海なんかもきれいだが、その種の美しさは他の国にも優れたところがあるんじゃないかと思う。


この登りでカメラの電池を落とし、以後撮影不能に

踏み跡はほとんどないので、どこが歩けるかを常に考え、集中して歩かなければならない。
今回選んだのは沢登りの初心者向きのコースで、ボルダリングのように難しい動きをしないと登れない場所があるわけではないのだが、何しろ常に水の流れを受けているような地盤だ。崖を登っているときに、足場の岩がぼろっと崩れるようなこともある。水の流れは感動を与えたり恐怖を与えたり、いろんな役割をするなぁ。

最近、登山道を歩いて頂上に登ることに、少し閉塞感を感じていた。たいていの場所は計画したとおりに到着できる自信がついてきたのは良いが、それと同時に登頂の達成感は少なくなってきた。自然の美しさを楽しみにきたのに、目に残るのは明らかにオーバーユースの登山道、荒れていく自然。晴れた頂上からの大展望は感動するが、その途中の単調な労働。 そんな感じに抱えてきた矛盾点を、すべて解消してくれそうな気がする。 沢登りは、一歩一歩が楽しい。見所がポイントではなく、ライン上に分布するので、歩いている間中楽しい。 歩く人も少なく、常に水流がエリアを洗い流すので、本当の自然の中を歩いている感じがする。自然の中でなんとかやっていける自分の能力を見直してみたり、歯も立たずに自分の小ささを思い知ったり、そんな冒険が味わえる。 これまで山はけっこう登ってきたが、渓谷自体を楽しむことは目的にしていなかったな。片手落ちだった。「山と渓谷」という雑誌があるが、渓谷も山頂に劣らず魅力的な場所なんだな、ということを実感する。


でかいキノコもあった。ナメコかな。

遡行図を頼りに歩いて行くのだが、自分が正確にどこにいるかを理解するのは、そんなに容易では無さそうだぞ。枝沢を何回通ったか数えてみても、晴天続きと雨の直後では数違うだろうし、一旦中洲になったところが再合流したのか、遠くから枝沢が合流してきたのか、林の中では分かりにくいところもある。
滝登りの難しさだって、たぶんちょっとしたルートの取り方で難易度が大きく変わりそうだ。水に濡れることを恐れなければ、ホールドがひとつ見つかって意外と簡単に登れちゃうこともある。

登れなさそうな滝に出くわしたら、横の尾根から高巻きして行くことになるが、高巻きすれば安全という訳ではないことも分かった。急斜面で登れなさそうな滝だから、尾根に出ても急であることには変わりない。しかも、滝の岩場よりも足場は弱い。まぁ滑ったときのダメージは違いそうで、滝を直登するよりは安全だが、再び沢に降りられるかも確かに分からない。

今回のコースの核心部、12mの大滝は割合スムーズに高巻きできたが、これは確かに判断が難しいな。

そしてその先、クライマックスの滑滝。大きな一枚岩に水流が走り、それが何mも続いている。
これは凄いな。水流は広く浅く早く岩の表面を流れ、細く深く岩を削り、いろいろな変化を見せる。足場は平らで固く、歩きやすくなる。
この岩はどれだけの岩なんだろ。特に高名な滑滝ではなさそうだが、それでもこの大きさだ。エアーズロックまで行かなくても、巨大な一枚岩ってけっこうあるのかな。こちらの大岩は水流があるし苔むしているし、そこらへんの山でも世界遺産に劣らない美しさは味わえる。

ガイドブックでは、その先の登山道と合流した地点で登山道に入る、とあるが、まだ沢沿いに進むことはできそうだ。もうしばらく、だいぶ水流の減ってきた沢を進む。

その先の二股になったところで、二万五千図に載っている尾根道を取った。 が、この道はほぼ廃道になっている。後で振り返るに、ここの二股は左の沢に出て登山道に合流するのが最も楽だったな。
尾根道でも道標の跡を2、3見たので昔はちゃんと道があったのだろう。今でも、わずかにトレースがあったので沢登りの人とか山菜採りの人は使ってるのかもしれないが、地形が緩くなるにしたがって、トレースが分からなくなり、薮こぎになる。

どうもこの二万五千図の旧道が怪しい。旧道は目の前の1446m峰の右を巻いているが、昭文社の登山地図に載っている新道は左を巻いている。とにかく頂上出れば分かるかなと、薮の中を登って行くと、頂上の反対側は防火帯になっていた。歩きやすい防火帯を伝って新道に合流、無事クリア。
薮こぎは渓流や登山道よりもはるかに歩きにくく不快だが、自分の居場所を推理しながらルートを見つけていく作業って、実はけっこう好きだ。

そして登頂。残念ながら曇ってて展望はないが、大きな満足感を抱いてお昼ごはん。

下山道は、登ってきた沢の脇を通る登山道をとる。登った沢を振り返りながら歩くのも良いものだ。

2010年10月_滝子山平ツ沢・曲り沢の沢登り 先輩の写真アルバム。詳しい解説がついている。写真もきれいだ。
今回の沢登り以外の写真も面白いぞ。

下山後は実家に帰るMKちゃんを御殿場まで送って、再び先輩と合流。 日帰り入浴施設でゆっくり入浴し、道の駅で夕食。

やまと天目山温泉は、近くにあった入浴可能な老人ホームの温泉よりも、安く営業時間が長い。滑らかなアルカリ性の泉質で、露天もあって気持ち良かった。

夕食は鳥モツ丼。レストランは思ったよりも遅くまで営業していた。 その後、先輩の車で焼酎を飲む。晴れた夜空で、思いのほか星がきれいだった。

2010/9/26(日)

天気予報は下り坂だったが、朝は快晴。日が高くなるにしたがって雲は増えるだろうが、覚悟していたよりもだいぶ良い日になりそうだ。

本日は西側の曲り沢。下山道の状態によって、二つの出口が考えられる。二台の車をそれぞれの下山口に配置しておくため、途中から先輩の車に同乗して、林道終点まで突っ込む。(とても荒れた林道だった。)

駐車場の脇からすぐに入渓。今日の沢は、左右も開けていて随分明るい印象だ。地図に表記はないが、左右にわりとはっきりとした道もついている。どうもこれは工事作業用に作った道なんじゃないかと思う。

川の左右でも作業道でも歩けないことはないが、やっぱり川の中を歩いて行くのが楽しい。川の中でも、せいぜい膝下が濡れる程度で歩けるということが分かったし、靴が濡れてもそれほど不快ではない。 先輩も僕もけっこう大柄なので、大股でひょいひょい登っていき、二人でとても楽しい気分になる。

つーか先輩、ずいぶんワイルドに登っていくぞ。
普段は学者的な風貌で、職場内でも最も知的でクールな人だとと捉えられているはずだが、沢に入れば積極果敢に道無き道を突き進んでいく。僕は一緒に自転車レース行ったこともあるし、いろいろ話も聞いていたから知らない訳ではないが、たぶん部内の他の人が思ってる以上にワイルドな方だ。



沢登りって、溪によって随分と性格が違うようだ。その溪の難易度だけでなく、雰囲気も知っておくと良いらしい。
今日のコースは「ウォータォーウォーク」というガイド本に載っていたところなのだが、この本はこれまでの沢登りと普通の登山の中間を狙っているようで、ロープを使った登攀をせずに沢歩きを楽しむ、というコンセプトだ。そのコンセプトどおり、昨日のズミ沢に比べて随分と穏やかな優しいルートだ。緊張を感じるような場所はほぼ無かった。




標高を上げるにつれ、左右が開けてくる。
同時に、お天道様も昇ってきて、ようやく日の光が沢まで差し込んだ。
周囲の世界は色づき、一段と楽しくなる。

昨日の沢は途中で尾根に出たが、今日は水の尽きるまで登り、尾根に出るまで登る。源頭部はトーナメント表の下部のようで、次々と道が枝分かれする。自分がその何本目にいるのか、正確にはよく分からない。ゴールとなる尾根の登山道は見えていて、そこまで行くのはそんなに難しく無さそうにも見えるが、実際に登ってみると、足場が悪い急登でそう簡単には登れない。まぁ、木の根っこにつかまりながら、気合と根性で何とかごまかしながら登って行くことになる。

今までやってきた登山は、雪山は別として、基本的に登山道を歩く登山だ。あまり地図をちゃんとみなくても、道を外さなければ目的地に到着できる。しかし、山の中を一本のラインで知ることができるだけだった。
しかし沢登りでは、山を領域として見ることになるのではないかと思う。 1次元から2次元への大展開だ。いや、沢の形、尾根のカタチを意識せねばならないから、3次元だ。自分が3次元空間のどこにいるか、意識しておかなくてはならない。

水の流れが谷を作る。尾根が残り、さらに谷を深く削る。その中で、渓谷の美しさに感動し、鹿の足跡を探しながらの大冒険。沢登りの楽しさは、実際に登ってみて初めて分かったな。

滑りやすい急登を経て大谷ケ丸頂上。昨日の滝子山とは違い、誰にも会わない静かな頂上。柔らかい木漏れ日の中で大休止。展望は無いが、木の間から南アルプスと甲府市街を望むことができた。

帰り道は、車のおいてある場所へ降りる尾根道を使った。登山地図には載っていないが、2万5千図には載っている。トレースは浅いが赤テープがあるので、たぶん仕事道なんじゃないかと思う。

ただ、昨日の例もあり、2万5千図の道がどこまで正確かは分からない。地図の道は斜面のつづら折りだが、実際に歩いているのはまっすぐな尾根道だ。
尾根を伝って車のところまで降りられれば問題ないと思っていたが、どうもその尾根もはっきりしなくなってきた。左側の沢へ向かう道標がいくつかあったが、それだと車を止めた場所よりもだいぶ下へ行く沢に出てしまうかもしれない。 トレースは全く無いが、右側の沢道へ出れば帰れるだろうと、足場の悪い斜面をずり落ちながら無理やり右側の沢へ降りた。意外にも、この間の10分くらいが本日最大の冒険だったな。


少し沢を歩いて振り返ると、大きな堰堤が。よくぞまぁこんなところに。

その後はたぶん堰堤の立派な仕事道がついており、順調に下山。

下山後は再び天目山温泉に入湯し、体を癒す。
道の途中にあった、趣のあるお蕎麦屋さんで昼ごはん。

大変楽しい2日間だった。

ひどい渋滞に巻き込まれ、帰宅には予想以上に時間がかかった。 車を返しにいくついでに再びMKちゃんと合流し、彼女一押しの焼き鳥やさんへ行く。
たしかにすごく美味しいところで、食いしん坊の彼女が太鼓判を押すだけのことはある。 心地よい疲労感の中でビールを飲みながら、充実した週末の締めくくりとなった。

2010/10/4(月)

浜松土産のうなぎは白焼きで。さすがに美味しい。日本酒も進む。

2010/10/6(水)

何年かぶりに家電業界の大展示会「シーテック」を見学。今年は家電業界の展示というより、「3Dテレビ展」という感じで、各社3Dテレビばかりだった。

3Dって、大好きな人と拒否反応起こす人の2種類に分けられて、中間があまりいないんじゃない気がする。僕自身は、昨今の3Dブームに先駆け、写真展にて「ステレオ星景動画」を自前でやってしまうくらいだから、まぁ3D好き派なんだろうけど、さてさて世の中はどう反応するだろうか。

各社いろいろ見ていると、さすがに僕が手作りで作ったものよりも品質が良く、製品レベルになってるなと思う。が、今のテレビの用途すべてを置き換えられるかというと、そこまでは達していないよな。メガネを使っても、(グラスレスでも)裸眼による平行法や交差法によるステレオ立体視と同様、なにかの拍子に上手くはまらずに像が二重になることがある。映画やスポーツ、ゲームなどのように、夢中になって凝視する視聴のときはすごく良いけど、なんとなくニュースをつけるときは不要だろう。 そしてステレオ立体視以上の3D技術、ホログラムなんてのはまだ普及するには技術的障害がありそうだ。

ステレオ3Dは、白黒テレビがカラーになるほどの大変革は起こさず、かといって大空振りにもならず、得意な分野見つけてうまく住み分けていくんじゃないかな、というのが僕の予想。


ムラタセイコちゃん

2010/10/7(木)

恋人が食材買って遊びに来て、そのまま眠った。料理は僕が作ることになる。
グラム2円の割といい鶏肉は、シンプルな味付けを心がけよう。フライパンで焼いたあとに酒で蒸す。醤油ベースにすだち、薬味かけて。
ちょっと火が通りが足りなかった。

鮭はホイル焼き。ヨーグルト、にんにくの芽を入れて蒸し焼きにした。 けっこう美味しく出来て、彼女は夢中になってついばんでいた。

2010/10/8(金)

久しぶりに小麦粉こねて、麺にした。それなりの出来栄え。


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