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今回の船旅。荒れた外海を25時間。酒に酔いつづけるわけにも、景色を眺めつづけるわけにもいかない。
寝るしかない。
とはいえ、25時間も眠りつづける訳にもいかない。風の音と、エンジンの音と、波の音と、そういった絶え間ない轟音を聞きながら、考えごとをしたり、何も考えなかったりしている。ここで調子こいて本を読んではいけない。目を開けることさえ酔いの引きがねになる気がする。
今現在は酔いの海には浸っていない。だが潜りこんではいないものの、背後にその気配を感じる。酔いの海のぎりぎりのところに浮かんでいる。
そのような状態だから、あまり複雑な思考もできない。ただぼーっとする。明日も昨日もない。ただ揺られつづける。だがこういう状態は、昨日までの日常と明日からの旅の生活をはっきりと分けるのに便利かもしれない。
船酔いのぎりぎりのところでふんばっている頭で、目を閉じて想像してみる。
まっくらな大海原。月は雲に隠され、現れ、ところどころ白波を光らせる。
波は高い。船は大きいが、波に隠され、木の葉のように揺られ続け、わずかずつ進んでいく。
四方数百kmにわたって海は広がっている。この船以外に人工物は存在せず、ただ暗い海が広がっている。
少し絵画的な場面を浮かべてみたが、多分、現実もこの想像に近いのではないかと思う。
(2004 4/29)
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