3/4 ワナカ坊主

朝、しつこくガイドに連絡をとる。やはり状況は悪いが、できないこともない。とにかく一度あうことになった。
ガイドのRichard Grimmat氏。まぁ要するに釣り好きのやさしいおじさんだ。彼によると今日は風も強く、1尾も釣れないかもしれない。明日は状況が良くなるかもしれないし更に悪くなるかもしれない。That is fishing.それでもいいのならばやろう。フライフィッシングが初めてならば、まずキャスティングの練習からだ。
ニュージーランドに魅せられたのは、一つには魚によるところも大きい。まずはここで盛んなフライフィッシングというものを体験してみないことには何も始まらない。
というわけで草原の広場にてキャスティングの練習。フライフィッシングが他の釣りと大きく異なることは、糸の重さで仕掛けを前に飛ばすことだ。その投げ方も独特なものだが、力を必要とせずのようにタイミングで前に飛ばせば良いらしい。

次は実戦編。こういう日はリバーフィッシングは難しいということで、ワナカ湖の隣、ハウェア湖にて竿を振る。
誰もいない、風光明眉な湖だ。(これまで見てきたニュージーランドの風景は基本的にどこも美しいのだが)偏光グラスを通した湖の青はさらに深い。
湖の深さは、「I dont know.Very very deep.」とのことだが、Grimmat氏によると条件の良い日はトラウトが見え、それを釣れば良いらしい。このあたりも僕が今までやってきた釣りとは随分違うよなぁ。
釣り始める。投げるたびに後ろまであげるなとか、much betterとかコメントをいただく。

釣り人と一口に言ってもいろいろあって、海釣りをやる人は海釣りばかりやるし、淡水でやる人はほとんど淡水でやる。その中でもルアーをやる人、沖に出る人、かわはぎばかりねらう人、アユに情熱を燃やす人など、かなり細分化、専門化されている。(こういうことを考えればキリスト教やイスラム教の宗派争いも理解できるかもしれない。あるいはガンダムマニアの嗜好の派閥争いにも通じる)
フライフィッシングはその中では求道的なイメージが(なんか頭が硬そうなイメージも 詳しくは知らないが)ある。ニュージーランドにもこのような派閥争いはあるようで、この国のフライフィッシャーたちもルアー釣り(こちらではspin fishing)なんてただ巻いてるだけでつまらんよ、と言っていた。

僕の期待を裏切り、風は弱まるそぶりを見せない。湖のくせに波まで立つ始末で、これでは魚は水面に浮いてこないのではないか。

Practice,practice,practice,いわれるままに竿を振る。湖畔に沿って、さぐり釣りをしていく。虫の声を聞き、フライを変える。我が身を釣ること十数度、それでも風がないときはなんとなく糸をコントロールする感覚がわかってきたような気もする。
たしかに魚はいた。水面近くに姿をみせ、興味深そうにフライを眺める。ブラウントラウトだということだ。
だがそれだけ。一瞥すると身を返し、深場へ姿を消していった。見切られたのだろう。

悪条件の日にビギナーが竿を振った。当然のように坊主という結果に終わった。キャスティングの方法やフライで釣れる可能性を感じたことは収穫だったが、やっぱり悔しいよなぁ。釣りあげるにはよほどの幸運とセンスが必要かも知れないが、せめて1ヒットあったならば。まぁ次に期待。



ワナカではWanakaBakpakaという、随分と居心地の良いバックパッカーズに泊まっている。共同キッチンで相部屋が基本の安宿だが、ニュージーランドではかなり多くの人がこういう宿を使っている。僕の泊まっている5人部屋は今日は日本人で過半数を占めてしまったが、宿泊者(同時にニュージーランド旅行者)は世界各国から集まっている。多いのはヨーロッパ人で、ドイツ系わはじめ各国からきている。日本人も多く、ワーキングホリデーの長期旅行者が目立つ。ニュージーランド人はスタッフくらいしか見かけず、彼らは別の場所に旅行しているか、元々少ないかなのだろう。
どの国の人も自分達の旅を楽しんでいる。ニュージーランド人の陽気さに感化されてか、誰とも挨拶をするし、情報交換もする。こちらのやることにも適度に関心を持ち、適度に無関心だ。みながのんびりと好きなことをしているので、こちらも勝手に楽しめる。
ある旅行者はここのリビングで一日中ジグソーパズルを作っていた。地球の裏側からきてそういう時間の使い方をする。ちょっと日本人にはまねすることが難しそうだ。

(3/5,2003 記)

写真集 No,3

Wanaka
3/1-3/5