たぶん今年最後の釣りになるだろう。 会社の同僚二人と、真鶴の手前の江浦港からカヤック釣りへ。
星を見に行く時も感じていたが、カヤック釣りに行くにしても、サラリーマンが遊びでフィールドに出られるというのは、実に幸運なことだ。
海は凪いでいないといけない。強風はいけないし、ウネリがあると僕の場合は船酔いする。
空も晴れていた方がいい。曇りなら良いが、小雨でもこの時期はつらい。週末にそういう条件になるのが何割あるか。そんな週末に予定が空いているか。さらに、家族ができると天候の善し悪しだけでなく妻子の機嫌も重要になってくる。
そんな好条件が重なるのは、年間で数回になる。そんな日がやってきたのだ。 フィールドに出て勝負ができる喜びに感謝しよう。魚が釣れたらなお良い。
5時過ぎに家を出て6時半ごろに現地着。
若手二人はかなり気合いが入っているようで、すでに出航準備を終えていた。
江の浦漁港は駐車場代払えば一般客にスロープを開放しており、カートップボートを中心に10挺程度準備している。7時前の日の出と共に出航可能となり、僕は出遅れる。7時半過ぎに準備を終えて出航。
このあたりの海域は相当な急深地形であり、幅広い魚種を狙える。
若手二人も、水深200mを狙うと行って、カヤックに電動リール積み込んで沖合を攻めに行った。
僕はそんな深場を狙うタックル準備してないし、電動リールに耐えうる竿立ても無い。もっと浅場でカワハギでも何でも、釣れるものねらい。
風は全然無く、日差しも暖かい。が、無風地帯は予報によると丹沢や箱根に囲まれている沿岸地帯だけで、沖合20kmもいけば相当な強風のはず。うねりはそこそこある。まぁ、カヤック日和の範疇だ。
真冬の釣りでもけっこう暖かく、特に海水は気温よりけっこう高い。振り返れば真鶴半島の緑は鮮やかで、空も青い。やる気も高まる。
魚探の水深表示はみるみると深まる。特にポイントを知っているわけでもないし、全体的に急激なカケアガリで、そこまで場所にこだわらなくても、それなりに良い漁場のはずだ。水深30mあたりのところで、とりあえずカワハギ仕掛けを投入。
割とすぐにあたりがあり、割とすぐに釣れるものの、上がるのはキタマクラ。
キタマクラ、名前の響きのほど強毒ではなく、気を付けてさばけば刺身なんかは美味いらしいが、フグはフグ、そこまでリスクを背負うつもりはない。僕の数少ないリリース指定魚だ。生態はカワハギにかなり近いと思うが、釣り分けることってできるのだろうか。
開始から1時間以上たち、キタマクラが5,6連発するのみで嫌になり、深場へ移動。100m以内なら狙えるだろうと、水深80mくらいのところで、天秤仕掛けにオキアミつけて投下するも、やっぱりキタマクラ。こんな水深にもいるのね。
餌釣り諦めて、実績上あまり信じていないルアー釣りに転向。その中でも比較的信じているのは漁師発という和製ルアー、インチク。 ジグと違い、アクションつけずに巻いていれば良いはず。 魚探反応も、なんか小魚の群れがおびえて固まっているっぽいという感じの時に、大魚のアタリが!始まりつつあった船酔いも吹き飛ぶが、合わせを入れた際にばらす。 これを一度ならず、三度も繰り返すのだから、つくづく腕の悪さを痛感するが、これは経験を積んでいくしかないだろうから仕方がない。 状況的に、大サバなのかワラサなのか、とにかく何らかのフィッシュイーターだと思うが。
アタリが遠のくと、船酔いがごまかせなくなる。一発大物狙いのルアー釣りでは、集中力が持たない。
エサをチマチマ交換するのも船酔い的に嬉しくはないが、魚信があったほうがまだ何とかなりそうな気がする。
再度20〜30mラインでアサリ餌のカワハギ仕掛け投入。
この日の最初のキープ魚は、ハコフグ。ハコフグはフグ科ではなく、そんなに強い毒は持っていない。五島列島の名物で、白土三平のエッセイでも、魚突きの最初の獲物として紹介されている。一回食べてみたかった魚だ。
次に釣れたのがカワハギで、ここから潮流が変わったのか、かなりカワハギが釣れ始めた。2投に1尾くらいは何かが連れ、そのうち6割くらいがカワハギ。しかも割といいサイズ。その他はシマダイ、大きめのベラをキープし、トラギス、ネンブツダイ、キタマクラはリリース。
船酔いが収まるわけでもなく、吐きながらの釣りではあるが、それなりに釣れて面白い。
が、さすがに集中力は続かず、満潮過ぎてアタリも遠くなってきたかなあという14時くらいに納竿。
終わってみれば割と良い釣果。仕掛けも持ち合わせの物で新調しなかったし、餌もスーパーで調達、駐車場代と港使用料は1000円。珍しく、コストよりも水揚げ額が上回ったかもしれない。
同行者の一人は、水深200mで白ムツゲットしたとのこと。クロムツ、アカムツに比べて価値は低いようだが、カヤックで深場の獲物を狙い通り得たのは大したものだと思う。
もう一人は、タイラバでハタ釣ったらしい。
この海域はやっぱり色んな魚が釣れて、気に入った。アクセスも良いし、何しろ漁協がカヤック等の木っ端船を受け入れてくれているのが嬉しい。
また来たい。
カワハギの釣果は6枚だったかな。東京湾ほどフィッシングプレッシャーは強くないのだろう。サイズもけっこう立派で、3枚さばいたら大人3人でたくさん食べられた。
睡眠不足と船酔いで疲弊しているものの、弱音を吐いていたら「じゃあ釣り行くなよ」となる。気合と根性で3枚おろしまでは自分でやる。
刺身にするのは妻のほうがうまいし、やってもらった。
期待したほど胆のサイズは大きくなかったが、胆和えも薄造りも絶品。酒が進む。
シマダイとベラは塩焼きに。娘がパクパク食べた。
ハコフグは初めて料理したが、変な魚だ。
何しろさばく必要がない。文字通り、魚体が箱になっていて、箱の中に身と肝が入っている。
背骨も体表と一体化していて、実質は昆虫のように外骨格型の生物になっている。
この外骨格が、そのまんま鍋替わりになり、内蔵とって味噌混ぜて、蒸し焼きにしてしまえば良いらしい。
都合の良いことに、目の上の部分が台座になってしまう。
彼らも生存のために、独自の進化を遂げてきたはずだが、残念ながら蒸し焼きになるために生まれてきたとしか思えない。大自然の不思議だ。
カワハギは残りの3尾に昨日のアラも入れて、鍋にした。フグ属のやつらは良い出汁が出る。