久しぶりに船を動かす。
先月、会社の後輩がスミイカ船乗ってきて、そこそこ釣れたらしい。スミイカならポイントも僕の船の守備範囲だし、砂地に点在するスミイカなら、ピンポイントに場所を選ばなくても良さそうだ。イカの中でも特に美味しい部類にはいる。狙い目なのではないかと思う。
今年のスミイカは当たり年らしいし、季節もベストシーズンだ。クルーも釣具会社の若手釣り好きを3人確保し、期待が高まる。
予定通り、7時過ぎに出船。朝方は小雨もある曇天、思ったより風はあるものの、とりあえず中の瀬を目指す。 双眼鏡で周囲の釣り船を偵察したりしながら、なんとなく中の瀬界隈に着いたので仕掛けをおろす。
スミイカは、ほぼ海底に居るとのこと。
そこに解凍したエビ餌だの、蝦の形した和製ルアーだのをユラユラさせて抱きつかせる。
仕掛けを海底にゆっくりと這わせると良いらしい。釣り船だと、船を風で流しながら広範囲に探るが、しかし僕の船は釣り船よりも風の影響を受けやすく、微速で流すのが苦手だ。
今日くらいの微風なら何とかなるかと予想していたが、どんどん道糸出していかないと、海底にテンヤを置き続けることができない。
たまに竿をしゃくって、テンヤを踊らせることも重要らしいが、糸が斜めになり過ぎると、ちゃんとしゃくれてるのかよく分からない。
こうなると頼りになるテンヤスミイカ経験者は2名いるが、何だか微妙な顔をしながら釣りをしている。とりあえずベストな状況ではないようだ。まぁベストな流し方ができるなんて最初から思っていないが、彼らとてスミイカテンヤは1,2回かじったことがある程度。引き出しをたくさん持っているわけはない。今が全然駄目な状況なのか、多少頑張れば何とかなる程度かを判断できるほどのキャリアでもないらしい。
仕方がないので、面倒ではあるがアンカーを下ろす。水深20mでアンカー下ろしたのって初めてだった気がするが、チェーンは50mくらいはあるようなのでちゃんと利いた。
だいぶ釣りやすくなったが、広くポイントを探るという点では不利だろう。
それ以前に、案外みんな酔ってきた。
風も波も大したことはないが、僕の船は停船するとロールが非道くなるのも確かだ。
前日までの残業やら早起きやら、寝不足もそれを加速させるだろう。
魚が釣れない状況にそういうような条件が加わると、気力を振り絞れなくなる。(案外、釣り大好き人間も船酔いに強くない人も多い)。予想外に、スミイカねらってる時間は僕が一番長いくらいになった。
スミイカ経験者の一人は、「可能性を信じ続けられない」と、餌釣りに逃げた。すると型の良いシロギスがポツポツ釣れる。
これが狙い目だったのかもしれないが、僕は珍しく初志貫徹しイカを狙い続ける。
だが釣れない。昼過ぎにあきらめる。
帰路、潮目ができており、周囲で鳥が騒いでいる。魚の気配というか、釣れる条件のうちの大きな二つを発見。 クルーは、例によって全員寝ているが、ルアーを投げる気があるか聞いてみるとやる気を出してきた。
食欲のある、でかい魚が確実にいる。何しろ、視認できることがある。
鳥たちが集まり、その周囲に沸騰するように小型魚が追われる水面ができる。
釣具会社社員たちの腕も見上げたもので、途中にサビキもつけた投げにくそうなルアーでも、けっこうバシバシと良いところに飛ばす。
が、これだけ釣れそうなものなのに、案外釣れない。水面を見るとシラスが逃げ回っており、魚も鳥もこれを追っているようだ。ならジグサビキで良さそうなものだが、微妙な違いがあるのだろう。
あまりナブラに直撃させても沈んでしまうようだし、にぎやかな鳥山をやたらと追っかけても、モグラたたきのようにつく頃には宴が終わる。360度見回すと、案外近くでも魚が出てくる。
なんとかアジを一尾あげた。アジだけのナブラじゃないはずなので攻略仕切れなかった印象だが、サバと見間違えるような、35cm超の立派なアジではある。ほか、バラシが一回と海鳥一羽はリリース。
やがて魚のボイルも減り、クルーの帰宅時間も迫ったので帰港。
船もノートラブル、天候は最高でイカは釣れなかったが楽しめた一日だった。
やはり僕の船と遊魚船では狙える釣り方に差があることを再確認。プレジャーボートと遊魚船は違う、というのと同時に、やはり遊魚船の経験も重要だよな。状況を判断する引き出しの数が不足している感じがする。
帰り道は非道く渋滞して、いつもの倍の時間がかかった。
結局、船中アジ一尾にキス4尾。すべて一人のクルーの釣果で、残り3人は坊主(または海鳥1)。僕が船長で先輩だからか、彼が独身で料理が面倒だからかは不明だが、全部くれたので晩飯のおかずにした。
アジと一番大きいキスを刺身に、残り3尾のキスは塩焼きにした。 アジは肉厚で大きかったが脂の乗り具合は並程度。5尾分のアラで出汁をとった汁が大変美味しかった。
娘と公園行ったり、畑に行ったり。最近の休日の頻出パターンな過ごし方。
野菜も子供もどんどん大きくなる。
今シーズン2回目の栗剥き。昨日の夜に妻と二人でむいた。秋ももうすぐ終わる。
河原で軽くバーベキューでもするつもりで買ったホタテは、やらなかったのでグリルで普通に焼く。
父親が引っ越してきて、ようやく近居が実現。
実家の大型家具を一つもらった。物心ついた時にはすでに実家にあったやつだから、懐かしい感じがする。
新幹線乗って打ち合わせ+懇親会。
まぁ商売になるかどうか、さっぱり分からない仕事だが、サラリーマン的にはとりあえず組織内で言い訳が立つ程度の案件ではある。(サラリーマンではなくベンチャー役員というのも関係者に混じっているが)
お互い懇親会なんかすると酔っぱらいながら利害に関係のない迂闊な話題なんかもするわけだが、まぁ元々そんな案件に群がる連中は、通常の金になるタスクワークが苦手な者だと相場が決まっている。酔っぱらう前からそんな人たちだなぁと思っていたのを再確認した程度で、特に認識が改まるわけでもない。先方にとってこちらもんな感じなんじゃないかと推測している。
まぁ資本主義のサラリーマン社会でも、別に能士だけが求められているわけでもなく、山師的な指向のある人間にも居場所があるものだなぁというのに安堵感を覚えてみたりもする。
あらゆる事象を金額換算で評価しなければならない資本主義の世の中は、今日のごはんを稼げない我々には本来冷たいはずだが、明日のごはんの期待値というかハッタリ感を主張できれば、世間からもそうそう捨てられないのかもしれない。まぁそのあたりのカラクリを専業にする人もいるはずだから、せいぜい利用される価値があると見なされな努力をしていれば、それはそれで良いのだろう。
開拓者的なエンジニアっていうのは何だろうね。普通のエンジニアよりは山師的だが、生活は真面目な人と見なされることは多いし、実際の日常は積み重ねの真面目な感じはするのも確かだ。
そういう山師的な匂いの薄い濃いは確実に存在して、定型的な設計業務をスピーディにスムーズにこなす同僚たちとは微妙だが温度差はある気がする。ちょっと話せば多分お互いにそういう類の人種だと分かるような気もするが、世間一般的には「真面目なエンジニア」「山師」みたいなのに分類するカテゴリーがなく、どっちかの箱に入れられるのかなぁと、なんとなく感じてみたりしながら、金曜夜の新幹線に乗っている。