釣り。
剣先沖でライトマダイ。ライトマダイというのは、標準的なマダイ仕掛けよりも軽いおもりを使う、という釣り方で、コマセの量は減るが魚の引きはよりダイレクトに楽しめる、という感じかな。
転職早々、隣の部署の「釣り勉強会」なるものに誘われた。
その企画に乗っかっただけなので、僕は言われるがままに参加するだけだ。結局近隣の部署を中心に7人の仕立て船、主催した課長クラスの方が二人、僕以外には若手が4人で7人の仕立て船。仕立て船というのは船と船長を一艘貸し切ることで、対義語は乗合船。
僕は仕立て船に乗るのは初めてだが、乗合船という商売が成り立つのはほっておいても釣り客が見込めるエリアだけのようで、ちょっと僻地で釣り船乗ろうとすると、仕立て船しかないエリアというのも結構存在する。
もちろん東京近郊の湾岸は世界有数の釣りエリアなので、仕立ても乗合も船宿がたくさんある。人数が集まるなら、仕立てのほうが細かいサービスを期待できるという感じ。乗合船の場合は釣り人が密集するので、錘号数を揃えて糸が絡まるのを避ける必要があるが、仕立て船の場合はある程度自由がきく。
船宿は松輪港、あまざけや丸さん。転職先のライバル会社と関係が深いらしいとかいう噂を聞いたが、一参加者としては特に関係なし。
松輪港って何回か来たことがあるが、こんなに混雑するところだったのか。
三浦半島の端っこ、神奈川県下有数の都市化されていないエリアだと思っていたが、初冬の早朝、日の出前の広い駐車場は隙間なく車で埋め尽くされる。港には第一●●丸、第2〇〇丸と各船宿の各漁船が並び、日の出前の薄暗い空気の中で、おじさんたちが長靴の準備して、いそいそと嬉しそうに釣りの支度をしている。これがこの港の正装か。結構な殷賑具合だ。
釣り場は近い。
確かに東京湾有数の漁場が港のすぐ横だもんな。僕だってできればこのあたりに船置けたら、釣りももっと簡単だ。
ライトマダイの仕掛けは、ハリスが長い。コマセを入れるカゴの下、7〜8mくらいのハリスを使う。
竿の長さは2m程度なので、竿を持ち上げても糸の末端に手が届かない。最後はハリスを手で手繰る必要がある。7mのハリスが絡まらないようにエサ付けをするのは、結構な手間である。
僕は右舷側に座り、両隣には課長クラスのベテランの先輩。左舷側に若手4人。
さすが、ベテランの方たちは好く釣っていた。一投目にカワハギかけてその後ワラサをあげる。その後もポツポツイナダを上げていた。
イナダ、ワラサともにDNA的にはブリだが、釣り人は明確に呼び分ける。 イナダ:本日の標準サイズ ワラサ:大物 ブリ:超大物 という感じ。年齢が1,2歳ずつ違うのだと思う。「ワラサ級がかかった」「アジを餌にしてブリを狙おう」となる。 関東におけるブリの出世具合はイナダの下がワカシ。ワカシは夏の防波堤で釣れる、大きめのアジくらいのやつだ。地域によって出世名は変わり、カンパチ、フクラギ、ワカナゴなどがそれぞれブリのどっかの段階における地方名だ。
イナダサイズは僕にもかかった。イナダと言っても結構太っていて、半身で二人分のおかずになるサイズ。けっこうグイグイ引いてくる。 結局イナダは4尾上がったが、ベテランの方たちはもっと上げていた。針がかりするまでは腕の差なんて大して無さそうなものだが、魚には分かる違いがあるようだ。 ハリスを細くすると喰うなんてことを言う。魚たちが糸の細さを確認してから食べているわけではないと思うが、糸が細い方が餌が自然に流れ、警戒しないなんてことはあるかも知れない。
天候、海況ともに最高で、寒くもなく、船酔いもない。厚着してきて暑いくらい。
タイのほうはサッパリで、最終的に船中1枚。上がったのは8割方イナダで、各自のクーラーは満たされた。ほかにはサバ、ウスバハギ、アジ。一度大アジのポイントがあり、僕も一尾上げて一尾バラした。
帰り道に農家の直売所に寄って、三浦大根と長ネギ、柚子なんかを購入。さすがうちは三浦方面のアクセスが良く、暗くなる前に帰宅。
船酔いしなかったと言えど、船に一日中乗っていると、上陸後も揺れた感じで大変疲れる。昨日の睡眠不足で大変眠い。酔い止めの効果もあるかもしれない。
そんな感じでヘロヘロな状態だが、目を回しながらイナダを捌いた。酒もないので、ヘロヘロ状態で近所の酒屋行き、「春鹿」買ってくる。
自分で釣ったひいき目もあるかもしれないが、大変おいしいイナダだ。築地や北部市場で買ってくるやつよりも一段と美味いと
思う。思い込み以外の特徴としては、市場に並ぶものよりもさらに新鮮なこと、絶命しないうちから血抜きしていることなどがあるが、そのあたりは美味しさにどのくらい効いているのだろうか。
釣って嬉しいし食べて美味しい。釣りってかなり複合的に楽しめる趣味だよな。
イナダ4尾というと、それなりに食べ甲斐がある。夫婦二人と乳幼児一人では手に余るので、胃袋を募集したところ、元同居人夫婦が遊びに来たのでイナダで宴会だ。
ブリ大根は骨も食べられるほど煮られた。
今回はずいぶん可食率を上げられた。釣り場で捨てた内臓以外は、ほとんどの部位を料理した。 釣り上げられた魚のためにも、我が家の燃えるごみのためにも良いことだ。
娘は、先週妻の実家に帰った際に、ずいぶんと芸を仕込まれてきたようだ。手をパチパチと叩くのと、名前を呼ぶと手を上げるのをできるようになってきた。ちょっと仕込まれた犬くらいには育ってきたな。
イナダ歴4日目は洋風にソテー。最近我が家で流行っている万能調味料、醤油オリーブオイルが合う。
もうすぐごはんができる、というタイミングで娘が泣き出し、冷めてしまった。こればっかりは仕方がない。
イナダはこれで最後。5日分食べて、ちょうどいい量と言えるかもしれない。
最後は妻が照り焼きにしてくれた。バターを使うのがポイントらしく、たしかにこってりと仕上がる。
帰宅するなり、娘がハイテンションでじゃれてくる。食後、娘と遊んでいるうちに一緒に寝かしつけられてしまった。