高校サッカー部の仲間の結婚式の二次会へ。こういう式に呼ばれたのは久しぶりな気がする。
十余年前、人生で最も濃密な時間を共有した。ほぼ365日24時間、とはいかないまでも毎日2時間以上、最も厳しい時期を一緒に過ごした。
とはいえ、お互いそれぞれの時間を10年以上も経ているわけで、案外知らない面、知らない仲間たちもいるものだ。まぁ当たり前っちゃあ当たり前なのだが。
同席したサッカー部の仲間と3次会へ。男気ジャンケンで大勝利を果たし、皆におごることになってしまった。 まぁ、僕が一番飲んでいたので順当なのかもしれないが。
そうかひな祭りか。
あまり意識していなかったが、女の子が生まれたことだし、確かに祝う必要がある。今更ながら、子供が生まれたことを実感する。大人だけで祝うイベントでもないからな。
ちらし寿司を作ろうということになった。
何人来るかわからないうちに買い出しに行ったので、結構豪華に食材を集めてみたものの、結局参加者は義姉とその幼児のみ。
ウニとマグロ、甘海老、イクラを少人数でたらふく食べることになる。例によって我が妻は、これでもかというくらいムキになって具材を盛る。
毎度のことながら、市場に買い出しに行く魚介類は後悔をしない。ウニもマグロも美味かった。
そしてハマグリにも注目だ。千葉産の地物キロ1400円を500gほど。大きさも立派だが、味も立派。 吸い物も美味かったが、焼いても素晴らしかった。
近所のケーキ屋さんではひな祭り用のケーキが飛ぶように売れていた。 ショーケースに入っていた最後の現物を何とかゲット。
さて雛人形。
こういう贈り物文化は、なんだか近年は膨張しすぎてしまっている気がする。ちょっと気合いを入れて買うと十万以上してしまうらしいが、そうなるとちょっと頂くのにも躊躇する。(妻の実家の稼業だったが)
もともと雛人形は、幼児にとってのお守りだという。
まだ乳幼児の死亡率が高かったころ、可愛い子供が神様に連れて行かれないように、身代わりの人形を作っておくというようなものだ。
となると、とりあえず我が家は原義に近い祝い方をするか。
「流し雛」という風習を、なんとなくのイメージとその場のノリで真似してみたが、これが結構うまくいった。
義姉もずいぶんと長居してくれた。環境が整えば、育児中の母親でも結構パーティできるもんだ。
妻も、一か月子育てを先行する義姉にいろいろ相談できて良かったみたいだ。
今年は、こういう活動に力を入れようと思っている。
なんだか疲れた。たぶん、食べすぎで疲れたんだと思う。腹の中はウニや甘海老でいっぱいだ。
妻の乳房も、きっとウニやケーキで満たされ、乳幼児はその栄養をとるだろう。
赤ちゃんにとって妻は、ストローのような存在ともいえる。彼女は母親を通してひな祭りのご馳走を食べるのだ。
昨年5月にコンロを変えたが、最も効果を実感できるのは天ぷらだ。 天ぷらは、勘よりもテクノロジーで作ったほうが良い料理のようだ。何しろ温度管理が重要なのだから、素人の勘に頼るよりは
昨日の残りの甘海老は、殻つき揚げても大丈夫で、むしろ殻付いていたほうが美味しかったくらいかな。
妻の体調が悪化。昨日の天ぷらほか、食べすぎが原因らしい。
まぁ軽い発作的な程度で、幸いそれほど重体とならずに回復したが、授乳中の母親というのも気を使うものだ。
ほどほどという言葉を知らず、ひとたび気にしなくなると無制限に気にしなくなる妻の極端さに、自業自得的な理由はあるにせよ、食事制限があるのは食いしん坊の彼女には可愛そうにも思う。
しばらくほっといたビールの瓶詰め作業を行った。 片手で子供をあやし、片手で砂糖をペットボトルに注いだりするもんだから、なかなか時間がかかる。
野菜を蒸して、塩やらオリーブオイルをつけるだけの前菜が、簡単でおいしい。
先日、会社の飲み会で行った飲み屋で出てきて、割とみんな喜んでいたが、我が家では結構前からの手抜きオードブルだ。
僕は野生の生物の本能には敬意を払っていて、野生にかなり近いと言える生まれたての赤ちゃんの生存能力も一目置こうと思っている。
確かに、産まれた瞬間に乳を飲める能力を持ち、教わりもしないのに泣き方を知り、くしゃみ、せき、しゃっくりなんていうのも先天的にできるようで、その点は大したもんだと思う。
しかし、乳をのむときに体を反らせるという性質は理解し難い。お腹空いてんのに、そんなに背中突っ張らせたらおっぱい飲めないだろう。
妻が毎回苦労しておっぱいまで吸い付かせているが、お腹空いているのならば自分で乳まで向かうべきだと思うのだが。
妻の作った、横浜海軍式とかいう肉じゃがは、これぞ正統派の肉じゃがという感じだった。
子供が生まれたところで、そんなに可愛がるのだろうかという疑問は結構持っていた。何も自分の娘だからと言って、そうそう溺愛もしないだろう。
が、いざ色々と世話をしてみると、やっぱり情がわいてくる。
ちっこい身体で、前にも後ろにも進めないくせに、始終手足をばたつかせている。何が気に食わないんだか知らないが、断末魔の雄叫びをあげる。かと思えば、機嫌の良さそうな顔で、こちらの目をじっと見つめてくる。
とりあえず、抱いていれば湯たんぽのように暖かいし、抱かれているときは機嫌がいいようだ。
だんだん、小動物の吐息や絶叫ではなく、人間の声を出すようになってきた。表情も、まれだが笑い顔を見せることもある。
他人から見て愛くるしいという程のものでもないと思うが、とりあえず僕にとっては可愛い存在になってきた。