想像していたよりもアウェイ感は弱かった。けっこう若いお父さんが付き添いで来ている。 そしてとっても込み合っていた。土曜の朝はそんなもんなのかもしれない。
妻に妊娠の気配があるようなので近所の産婦人科に付き添う。
学校の身体測定のように、いくつかの計測を巡回しているのを横目に、図書館で借りてきた本を読んでいると、最後に診療室に呼ばれたようなのでついていく。
さらに妻が別室に連れて行かれたので、また本に目を落としていると、看護婦さんから「画面出てますよ」。
もっと間接的な証拠とか、なんらかのデータから「間違いないですね」くらいのことを言われるのかと思っていた。
周囲に誰もいなくなって、油断していたところにビジュアルな物的証拠。
例の、最近の赤ちゃん写真集の最初に出てくる超音波写真。何度か見たことはあるが、白黒の静止画だと心霊写真のようでなんだかわからなかったが、動画だとかなりはっきりと分かるのね。
「単細胞から2個に分裂し、4個に分裂し、・・・」「人間もほかの哺乳類も、生誕のときに進化の過程を再現する」なんてことを習ったので、まだ虫だかメダカだかよく分からないような生き物がいるんだろうなと思っていたが、そんな時期はあっという間に過ぎてしまうらしい。思ったよりも人間の形だ。 心臓も動いている。まだ2cm程度の生命体だが、すでにけっこう高級な器官を備えている。少なくてもミミズやバッタよりも大型化をもくろんでいるようだ。
喜んだり不安になったりするのはとりあえずこの先にとっておいて、今日は何しろびっくりした。
かなりの高確率だと予想はしていたし、意図した時期に意図したとおりの結果になったわけだが、あんまり実感が沸かないところで実物を目にした。
耳や頭で理解するよりも、目から入ってくる情報は衝撃的だ。本当に子供ってできるんだなぁ。
生物の、もっとも根源的であり、もっとも不思議なプログラムが発動している。それも、妻と僕の手によって。
なんだか不思議だ。
僕は数年前まで、一生結婚もせず、なんだか妙なことに没頭しながら爺さんになって死んでいくのだろうと思っていた。それが、人の親になる日が実際に来るとは。
この先どうなるかは分からないにしても、とりあえず現時点で分かる範囲では順調に推移しているようだ。
彼or彼女はきっと猛スピードで成長していくのだろうが、すぐに出てくるわけではあるまい。親側がこころの準備を整えておく時間も多少はあるだろう。
ということで、近所のビストロでお祝いのランチ。
おもに妻作る。
図書館よったついでに買ってきた、伊勢屋の「とびあがるほどおいしい豚肉」。
オーブンで焼きたいので厚切りのが欲しいと頼んだら、ご主人がいろいろコツを教えてくれた。かなりの高級人気店だと思うのだが、気さくな方だ。
久しぶりに、ちょっと気合いを入れてラーメン作った。
そろそろホタルの季節なんじゃないか。
夕食を早めにすませ、先日偵察してきた生田緑地のホタルの里へ行ってみた。
暗い田園の中に清流が流れウシガエルが鳴き、とても家の近所とは思えないいい雰囲気なんだけど、ホタルは見つからない。 たまに光っているものがあっても、街灯が塗れた葉に反射しているだけだったり、ようやく見つけた一匹かと思ったら、蛍光塗料の塗ってあるゴミくずだったり。
あきらめて帰ろうかと道を戻る途中、いた!
明滅を繰り返し、本気を出すと明るいLEDくらいは光り、くらいときは蛍光塗料くらい。もっと気合が入らないと光を消す。
僕は今までホタルを見たことがあったかどうか、あまり印象に残っていないのでもしかしたら初めてなのかもしれない。が、見ればわかるもんだ。
一匹見つければ、その周囲にもう数匹見える。
想像していたような光の乱舞というわけではなく、写真とってもそれほど見栄えする感じでもないが、近所にホタル見れる場所があるというのはけっこう嬉しいもんだ。
これがマックスの状態なのか時期的なものなのか気候の問題か、翌週になるとその理由が少し明確になるが、とりあえず見られて良かった。
図書館で借りてきたオーブン料理の本に啓発されたようで、妻が作ってくれた。
産婦人科でもらってきた書類に、「スクリーニング検査を希望する方は云々」とある。
詳しくは分からないが、ダウン症その他の遺伝子的な病気がないかの検査だと思う。
ちょっと調べると、ダウン症が発生する率は年齢によって1000人にひとりから100人にひとり程度。 知り合いの中に一人くらいいてもおかしくないくらいの率だ。自分のところに発生しないとも限らない。
その検査は受けた方が良いのだろうか。
結果がどうであれ、知らないほうが幸せな検査のような気がする。
1.:検査を受ける | →1.1:良い結果 | →ちょっと安心 | |
→1.2:悪い結果 | →産むか? | →1.2.1:産む | |
→1.2.2:産まない | |||
2.:検査を受けない | →2.1:遺伝的欠陥なし | →人並みに育てる | |
→2.2:遺伝的欠陥あり | →苦労して育てる |
というシーケンスになると思う。
検査を受け、1.1酔い結果が出ればまぁ良いとして、1.2になった場合はどうしたものだろう。どちらの選択肢をとるにしろ、、絶対に迷いが残るんじゃないかと思う。
1.2.1:産むという選択肢をとるのは、それなりに覚悟がいる。どのくらい手間やお金、時間がとられるのか分からない。子育て以外にやろうとしていた他の夢をあきらめなくちゃいけないのかもしれないし、他の子供を生むこともあきらめなくちゃいけないのかもしれない。
成人するかどうかも分からない、人々のために就業できるかどうかも分からない子供に莫大な手間をかけるのも、不毛といえばそうかもしれない。
そんな苦労を避けるために、堕ろすという選択肢をとるのか。
国によっては、ある条件を満たせば検査が義務付けられ、悪い結果が出ればほぼ100%堕ろすというところもあるらしい。
一方、そういう子供を育て上げることで、苦労はしても人生に充実感を覚える人も、世の中にはたくさんいる。
産まない選択肢をとるのだって、ものすごい覚悟が必要だ。母親側へ与える肉体的・精神的苦痛も計り知れない。
どちらの選択肢をとるかはさておき、どちらにせよ強い覚悟と強い意志が必要だと思う。それがなければ、どっちをとったって後悔の海に沈みそうだ。 が、そんな覚悟をもつことができるかどうか。けっこう時間的余裕もなさそうだ。
そんな検査の結果は、知らないほうが良いように思える。検査を受けずに、目の前に与えられた情況に対してがんばっていったほうが、とりあえず迷いは少ないだろう。 幸か不幸か遺伝的欠陥のある子が生まれたら、その時は覚悟を決めて育てるしかない訳だし。
録画しておいた日本代表のゲーム、推理小説の結末。そんなものと並んで、生まれてくる子供のことは、先んじて知る必要のないことだと思う。
妻担当のオーブン料理。
スーパーで安売りしていたスペアリブもすばらしかったが、サラダも豪華な感じで旨かった。
今日もオーブン料理。妻担当。昨日のスペアリブの残り脂を利用したとのこと。
たしかに、ごはんの火のとおりが良くない。ガラス皿は熱伝導率悪いんだろうか。
一日中図面を描くことに専念。仕事したなぁという感じの疲労感。
帰宅すると、妻はもう横になっている。体調がイマイチなようで、あり合わせ食って寝たようだ。
僕も適当に冷蔵庫あさって、あり合わせの晩飯を作る。