この時期に雪を求めるならば、日本海側行くか富士山行くかしかない。 近いのは富士山だ。渋滞に巻き込まれながらも、昼前には余裕で登山口まで行ける。
今回の目的は、ヨーロッパアルプス登山を視野に入れたロープワークやピッケル技術の練習である。
富士山の雪も6月になると一雨ごとに溶け出して、だいぶ上の方に行かないとないようだ。GWの頃は登山口も雪に埋まっていたらしいが、今日は8合目の上あたりまで登る必要がある。
2時間程度登り、雪渓に入って練習を行なった。
●ロープワークの基本的な考え:
移動者にロープの一端を固定する。また、大地に制動機を固定し、制動機にロープの他端を通す。確保者は移動者の動きに合わせてロープの長さを調節し、移動者になんかあったときに制動機でロープの動きにブレーキをかける。
という感じ。
落ちた後どうするかなど、派生技術はたくさんあるが、あとはいかに早く安全に固定点を作るか、というのがカギになるようだ。
それを実現するのがスタンディングアックスビレイという技術で、これを練習してみた。ピッケルを雪面に刺し、それを踏ん付けて固定点を作る、というもの。
これは便利だ。割と手早く作業でき、ちゃんと確保できる感じがする。
これに対し、コンティニュアス歩行という技術もある。
数珠繋ぎになり、双方ともに歩く方法。一方が落ちた時に他方が止める、というもの。
ということは、確保しなければならない瞬間が突然やってくることになる。氷河歩きは普通コンティニュアス歩行になるらしいが、実際やってみると難しい。
わざわざ確保点を作ってる訳にもいかないので、確保者自身の体重と気合が固定点となる。特に僕が落ちた場合、MKちゃん一人で衝撃に耐えられることに確信がもてない。
時間をかけてでも、尺取虫式に固定点作りながら進む方式の方がイメージが沸く。
ところで、僕は山登りを始めて10年以上経つが、まだ富士山には登ったことがない。今週末は天候も良いし、この機会に登っておくのは良い機会だ。
もう1泊して、明日登頂することにする。
この時期に開いている山小屋は、佐藤小屋だけだ。
車で行けてしまう五合目にあるので、ものすごく有利になる分けでもないが、他の場所に泊まるよりだいぶ有利だ。
今日の宿泊をお願いする。思ったよりも宿泊者は多く、15人くらい居ただろうか。
出発を決めたのは昨日の夜なので、いつになく食事もテキトー。
買い置きのレトルトカレーで間に合わせた。
銘柄を2種使い、トマトペーストも混ぜて変化を楽しむ。けっこう美味しかった。
予報はそれほど悪くないが、午後は下り坂。早いうちに登頂し、早めに家に帰ろうという方針。暗いうちに出発する。
どうも妻の体調が良くない。
昨日から高山病のケがあったが、さらに悪くなったようだ。疲労はないが気力がでない、なんてことを云っている。
我々が標高3000mに来るのなんて、そう珍しくもない。 高山病なんてヒマラヤなどの5000mくらいで出るものかと思っていたが、ちょっとした体調に左右される、なんてことは聞いたことがある。彼女は先週飲み会続きで不摂生な生活をしていたし、そんなこともあるかもしれない。
二人でお鉢巡りまでするのは無理そうだ。僕が彼女の倍のスピードで歩けば、お鉢を一周した後に稜線部で合流できるので、そういうことにして別行動にする。 彼女は以前登ったことがあるし、無理なら小屋まで引き返せば良い。
富士山の登山道は、さすがに多くの人が歩くだけあって、整備は行き届いている。6合目より上は砂礫の山なので、自然の中を歩いている気はほとんどしない。 アクセスは良く、手っ取り早く標高を稼げるので、トレーニングにちょうどいい山だと思う。
ここのところの僕の登山は、たいてい誰かを連れて来ていた。集団で来ることも多かったし、そうでなくても大抵妻がついて来る。 なので、同行者のペースを気にせずに歩くのは久しぶりだ。ペースを上げるので肉体的には少しきつくなるが、久々の解放感を味わう。
6月の富士山は、人口密度も適度だし(スキーヤーが多い)、日も長く天候の急変も少なそうだし、雪があるぶん変化もあるし、良い季節なんじゃないかと思う。雪の状態は変化の真っ最中で、上旬と下旬で全然違うだろうし、年によってもだいぶ違うだろうが。
今日は登山道が雪に埋まるのは8合目付近から。8合、8号5、本八合と、割と広いエリアに8合目らしき名前がついていて腹立たしくなるが、まぁ大体そのあたりから雪に変わった。
軽装のランナーや観光客はいなくなり、雪山装備の人たちばかりになってくる。
アイゼン着用率が高くなるが、特に滑る雪でもないのでつけずに登った。
確かに標高の影響はある。
最後の急登で息が上がる。そう遠くないところに鳥居が2つ並び、2つ目の鳥居が頂上なのだが、なかなか着かない。まぁ、斜度はかなりきついということもあるが、同じ標高差を登るにしても、すぐに心拍数が上がって足が止まる。
お鉢を回って見下ろせば、妻が登って来る。
無事にここまで来れたか。
とりあえず頂上で記念写真を撮るも、しかし彼女の体調はが回復したわけではないようだ。見上げた根性ではあるが、だいぶヨロヨロと歩く。
考えてみれば、バナナの手前に落とし穴をほっておけば、彼女は落とし穴にはまるタイプの素直な子で、とにかくどこでも一緒に来たがるさみしがり屋さんだ。 辛かった場合は先に小屋に帰りなさいという指示は複雑すぎたかもしれない。
まぁ、急な雪面の下りだ。
彼女は尻セードを得意としているので、滑り降りて行けばなんとかなる。
あっと言う間に8合目まで下り、左側の雪渓までトラバースした後にまた7号目まで滑り落ちる。標高差1000mくらい下げただろうか。
高山病は標高を下げればすぐに直ると聞くが、容体はそれほど良くならない。雪がなくなり、普通の歩きとなるとまた随分とペースが落ちた。
が、遅くても、すすんでいればいつかは着く。まぁどうにかこうにか、無事に下山。なにしろ根性はある子だ。
ヨーロッパアルプスに向けて、有意義と言えば言えなくもない登山となった。体調管理その他もろもろ、慎重にいかなくちゃいかんな。
やはり富士山は関東圏からアクセスが良く、帰り道は下道のみ。ナビ様の言う通りに帰ったら、渋滞を避けられた。たまには言うこと聞くもんだ。
研修終わり。大学生に戻ったかのような一週間だった。
学問分野も様々だったが、講師たちの教え方も様々だ。説明している内容は難しくても、とりあえず熱意は伝わるような人もいれば、こいつこの場に何しに来たんだろというような、資料を棒読みするだけの人がいたり。
今日のごはんは妻担当。
僕は久しぶりの宇都宮出張。特許ネタの発表やってのんびり帰るつもりだったが、製品グループに捕まり、1日手伝いをやる。
まぁ良い機会だ。それなりに設計も手伝った試作品の実機を、ようやく自分の手で触ることができる。自分の子供、と言える程ではないが、僕の血も分けているというくらいには手伝ってる。
トラブル対策として借り出されたが、1日手伝って整理してみると、試作品に問題があるというよりは、指摘された点をうまく整理できず、回答できなかっただけ、という印象。試作品は思ったよりもちゃんとできている。
慌てるような問題では無い気がしたが、まぁ製品開発ってテトリスのように慌ただしく、落ち着いて考える暇があんまり無いというのも納得はできる。
実は本当に必要な仕事ってもっと少ないんじゃ無いかという気もするが。