都会に住む我々が新鮮な魚を食べるには、大ざっぱにいって二種類の方法がある。
一つには、新鮮な魚を我々のところまで運ぶ。
もう一つには、我々自身を新鮮な魚の産地まで運ぶ。
冬の味覚ぶりといえば、富山湾のものが高名だ。氷見産のものはブランドぶりとして知られている。 日本海側まではるばると五時間程度かけてブリを食べに行くツアーを、昨年好評だったので今年もやることにした。
こんな物好きツアーの今回の参加者は、どういうわけか女性ばかり。
比較的若いのから比較的若くないのから、美醜様々もあるかもしれないがとりあえず皆美しいということにしておいても、まずは一様におしゃべりを得意とする生物ということに間違いはないだろう。四面楚歌的な状況である。
男女男と書いて「なぶる」、女女女と書いて「かしましい」と読むが、「女女男女女」みたいな漢字があったとしたら、ハーレムというよりは、下僕とか、荷物持ちとか、そんなような読み方になるんじゃなかろうか。
女子会にするのなら女子だけでやれば良さそうなものだが、まぁ行きがかり上仕方がない。運転手やら何やら、いつもに増して召し使い的役割に従事することになる。
というわけで、富山に着いたのはお昼前。前日入した食いしん坊たちは、三次会までやったとか何とか、朝までワインやら日本酒やら、怪獣になって恐ろしいほど飲んだようだ。
昼ごはんはお寿司。富山随一の名店なのかは分からないが、うちの食いしん坊が推薦するくらいなのだから相当なものだろう。
その期待に違わず、たいへん美味しかった。
曙酒造さんは、とても小さな酒倉だが、純朴に誠実に酒造りをしているような感じで好印象。
今では珍しい、船搾りという方法で酒を搾っている。
効率は落ちるかもしれないが、良いお酒ができそうな方法だ。そして、酒粕も美味しいのが出来そうだ。
土蔵は酵母に満ちているということ。幸せの香りがする。
宿泊は昨年と同じく桜が池のコテージ。 宿泊者はやはり我々のみ。暖房いれておいてくれて、とても暖かい。
さすがにそろそろ魚介類以外のものが良かろうということで、お昼ごはんは洋食。MKちゃんの友達のシェフが、住宅街に店をかまえているのでそこへ行く。 さすがにこんなところは地元の人じゃないと知らないよな。
夜はコース料理を出すが、昼はもうちょっと気軽なランチ定食中心のようだ。 たいへん素敵なお店で、料理もパンもずいぶんと美味しかった。
今日は、大吟醸の搾りをやっていた。満寿泉の大吟醸は、贈り物なんかに使われる超高級酒だが、惜し気もなく味見させてくれる。
口に含むと、驚きの味。軽くて香ばしくて爽やかで豊かで、お酒じゃないみたい。アルコール分や新酒なので炭酸は強く感じられるのだが、フルーティなジュースのような印象。
「日本酒苦手って人がいるけどね、飲めないんじゃなく美味しい日本酒を飲んだことがないだけなんだよ」
こういう、タンカを切ったような説明も、このお酒を前にしたら深くうなづける。
帰りの電車では、鱒の寿司食べくらべ。思った以上に味の差、タイプの差がある。酢めしに鱒がのってるというフォーマットは同じなのだが。
富山県人に鱒の寿司の話をすると、二言目に「どの銘柄を食べました?どれが好きですか」とかえってくるが、話題になるのも納得だ。
美味しいもの、そうでないものの差は大きかったが、美味しかったのは何という屋号だったか失念。