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2008/11/1(土)

思い返してみると、体育の日の連休は3年連続で南アルプス、毎年広河原を起点にしていた。

そして文化の日の連休はこれまた3年連続で、山登りよりは文化的に、竹芝桟橋を起点に伊豆諸島へ向かっている。 一昨年の式根島、昨年の神津島に続き、今年は秘境青ヶ島。


また連休前に風邪を引いて、今日の会議中もなんだかぼーっとしていたが、これはもしかしたらなんらかのアレルギーなのかもしれない。症状はくしゃみと鼻水ばかりだし。

浜松町の駅ビル下で、酔っ払うサラリーマンのおっさんたちの合間でジンギスカン定食。

チーム・バチスタの栄光

今回は少なくても途中までは一人旅だし、本は絶対にほしい。読みかけのものは少ないし、浜松町のでかい本屋で買おうと思っていたが、あえなく閉店の時間。絶望的な気分になる。
ツタヤとか古本屋とかないよなぁとか思いながら、コンビニのすごくつまらなそうな本が並ぶ本棚の中からこの本を発見。

面白かった。
キャラクターの作り方がマンガっぽく、読みやすい。奥田英郎の伊良部先生シリーズに似ているかな。


今回の参加者は4人。僕以外の3人は3連休の前後も休んで夜行+4泊、僕は夜行+2泊だが、まだ帰りの飛行機がキャンセル待ちになっていて、どうなるか分からない。

海況は、ベストではない。三宅島のあたりから揺れが大きくなってきた。 御蔵島は条件付きだったが結局接岸できたが、このぶんでは伊豆諸島最弱の港を持つ青ヶ島への便は、欠航するかもしれない。
他の仲間たちは、昨日の船で青ヶ島上陸を果たしたらしいが、最悪彼らに会えないまま、今回の旅を終えるかもしれない。

問い合わせると、やはり欠航。まぁ覚悟はしていた。仕方がない。今日は八丈島泊だ。
となると、宿と足の確保。宿はいつも通り、ガーデン荘で問題ない。足は、今日は一人だから、チャリを借りるか。てきとーに歩き回って、レンタカー屋でマウンテンバイク借りた。

青ヶ島行の船で食べるつもりだったが、サイクリングの途中で食うことになった。

郷土資料館へ行く。さすが八丈島は伊豆諸島の文化の中心。流人を受け入れてきただけはある。展示品も充実しており、全部見るのにだいぶ時間がかかった。これまでに行ったところ、土日は開館していない利島の資料館や何だか展示品に統一感のない神津島の資料館に比べて、ツッコミどころは少なく、満足感は高い。

せっかく一人旅だし、久しぶりに釣りでもしようかとも思ったが、風が強い。釣竿借りて自転車こぐのもバランスが悪い。とりあえず先延ばしにしてサイクリング。
滝を目指し山中を漕ぐも、畑の迷路に迷い込む。1時間ほどの努力は徒労に終わる。

ガーデン荘着。のどが渇いたので、冷たいレモン水を出してもらった。

ガーデン荘で本借りて、防波堤で寝転んだり、足湯に浸かったりしながら、日が沈むまでだらだら読書。

藍ケ江の港は風裏になっているようで、波は静かだった。 釣り人10人くらい。スズメダイのほかは、ムロアジがぽつぽつ上がっていた。 泳がせ釣りしていたおっさんが一度、大物を針にかけていたが、あえなくラインブレイク。ものすごいぶっといハリス使ってたみたいだが、サメなんじゃないの?とのこと。


足湯からの夕日

今日は同宿者は数人いたが、外食しに行ったらしい。
ガーデン荘のおじちゃんおばちゃんそしてネコを相手に、だらだらと焼酎を飲み続ける。

いろんな話題に飛びながら酔っ払う。この宿にとまったときにいつも味わうような夜だった。


ニャンコと呼ばれてる

2008/11/2(日)

青ヶ島行のヘリが予約できたので、朝っぱらから空港へ向かう。酒は抜け切っていないが、まぁ自転車こいでれば醒めるだろう。

ヘリコプターに乗るのは初めてだ。飛行中も、いろんな計器類と操縦している姿が見えるのが面白い。 八丈島空港では律義に滑走路走っていたが、それは「走っていた」という表現なのか、滑走路沿いに地面スレスレを飛んでいたのかが判然としない。

乗り心地は、思ったよりも普通だ。飛行機よりも体に負担が少ない気がする。微振動と騒音はあるが、目つぶって耳ふさいでいれば、電車に乗ってるのと区別しにくいんじゃないかな。

そもそもヘリってなんで飛ぶんだっけ?あらゆる方向に動けるんだっけ? 羽根は最低限何枚必要で、どこの角度、スピードを変えるとどういうように動くのか、そういえば理解していないな。メインローターと回転止めと、最低2つは必要な気がするが、進むのどうするんだ?

仲間たちと合流し、島内を散策。
噂には聞いていたが、青ヶ島はすごい地形だ。海面から、にょっきっと絶壁が立ち上がってる。島の周りが全部そういう地形だから、大きな島ではないのに海は遠い。

絶壁は、ぐるりと回る外輪山の頂まで立ち上がってる。外輪山の一角が、島の最高峰大凸部(おおとんぶ)。集落から20分くらいのさんぽコースで、島中を見渡せる。到着後、最初に向かったところだ。

そこから見る外輪山の外周は、一周1、2kmくらいだろうか。がんばれば1日で歩けそうな距離ではあるが、道はないので普通の人間には無理だ。

集落は、北側のややゆるやかな斜面に広がっている。似たような条件の利島、御蔵島に比べて、家々の間隔がまばらな印象。

青ヶ島は、外輪山の内側にもう一つ世界をもっている。
火山の火口部が広い平地になっていて、その中央にもう一つ、プリンのようなミニ富士山のような山がある。
広い平地は緑に覆われ、畑などに利用されているらしい。

こちらのほうが土地広いし、風も遮られるし、明らかに住みやすそうだが、今は住宅はない。数百年前に起こった火山活動の時に、外輪山の内側に住んでいた人達は逃げ遅れてしまい、それ以降、そこは家としては使わずに、昼間に通う場所として使っているようだ。


火山だから、たぶん水捌けがよくて水の確保に苦労するのだろう。
山の斜面の一部にシートが張ってあって、雨水をためるらしい。

青ヶ島では、外食できるお店は皆無なので、昼食も民宿についている。1泊3食という珍しい料金設定だ。 お世話になったのは「あじさい荘」さん。新築のデザイナーズマンションのような素敵な建物。自分たちで建てたらしい。


午後はドライブ。
青ヶ島の景色は不思議だ。ことに外輪山の内側は、大袈裟に言えばSFに出てくるような、地上と地下が裏返ったような印象さえ受ける。絶壁の急斜面に囲まれ、中南米の高山都市の風景ってこんな感じなのかな、と想像する。

車での移動は、本来ならば2次元的な移動のはずだが、この島ではずいぶんと3次元的な移動になってしまう。
集落から港へ行くにしても、外輪山の外側の縁まで坂を登っていき、そこからトンネルを通って内側の世界へ入る。外輪山の絶壁の道を下りきると、火口の平地。1周道路を半分回って、港方面の急坂トンネルを下っていくと、まぶしい海の見える世界に出る。上ったり下ったり、ずいぶんと世界が変わる。

港周辺が海に出られるほぼ唯一の場所だ。果てしなく広がる太平洋を前にして、ちっぽけな港、その脇に突堤が一本。短い堤防だが、岸から10mで完全に外洋の真ん中にいるな、と感じられる。 三宝港は、僕がこれまでに見た中で一番厳しい場所にある、ちっぽけな港だ。


港のそばの岩の上に、豆腐のようなでかいコンクリートが乗っている。
何のために?

道端には、建築廃材みたいなのがごろごろしている。外輪山の内側にはけっこう道路が交差しているが、密林と空き地が連続し、迷路のようだ。
島の人たちは根性がないそうで、パッションフルーツの栽培も1シーズンであきらめたり、途中でやめる計画が多いらしい。この正体不明の空き地たちも、そういうものの名残なんだろうか。

島には地熱を利用したカマド(蒸し器)があって、そこに卵、イモなんかをいれておくとこういうようになる。


こういうの

そしてサウナ。これまた火山の上記を利用したもので、火口部中心にある山の裾野に建っている。ほぼ唯一の、観光地らしい施設と言えるだろうか。

すごく熱い。そんじょそこらのサウナじゃない。
湯気が天井からポタリと背中にたれてきて、その滴が熱い。 視界が霞む。床から1mくらいの高さから上に、雲のような熱い水蒸気の層ができている。視界が霞むのはその層が原因で、首を突っ込むとさらに暑くなる。


秋の夕日だ。道はところどころ崩壊していて、地形の険しさを認識する。

人に「青ヶ島行く」と言うと、「何しに行くの?」と問われる。
上述のように何しに来た訳でもないのだが、強いて言えば酒を飲みに来たのかな。仲間たちは昨日も一昨日も酒飲んでばかりのようだったし。

どこ行ってもどうせやること変わらないのにわざわざ辺境まで出掛けていく。 何時までだったか忘れたが、建築姓のあるようなないような馬鹿話を延々としていた。

青ヶ島で一番有名なもの、青酎。 何軒かの家庭で漬物のように、あるいは密造酒のように作ってきたものらしい。 それが同一パッケージで売られているが、中身は違う。よく見ると製造者のハンコが押してある。たぶん、味もけっこう違うだろうし、品質も安定していなさそうだ。

今回飲んだものは、クセがすごく強く、あんまりおいしくなかった。これまでも飲んだことがあるが、ここまではクセ強くなかった気がするが。製造者の違いか、年度の違いか分からないが。
いずれにせよ、八丈島の焼酎の方がおいしいと思う。あおちゅうっていうと絶賛されてるけど。


八丈興発さんの新作。情け島のいもバージョン。安くておいしい。

2008/11/3(月)

青ヶ島滞在はちょうど24時間。 小雨の中を、再びヘリ乗って八丈島へ戻る。

したがって僕の今回の青ヶ島旅行は、「佐々木条件」を満たしていない。 ここで、佐々木条件とは、以下の2つをみたさなければ、その島に本当に上陸したとは言えないという、島旅仲間佐々木さんの作った条件である。
・1泊はする。
・少なくても片道は船を使う

まぁ別にいいのだけど。

本日の八丈島は各地の小学校で運動会が行われている。 そのため、どのお店も定休日で(見学に行ってるらしい)、昼飯食べるのに苦労する。

ようやく見つけた一軒。「膳」という新しいお店。
ここのところ、島仲間たちと旅行すると、必ずと言っていいほど誰かが偶然知り合いに遭遇するのだが、偶然入ったこんな店でもそんな事が起こる。

「申し訳ありませんが込み合ってましてお待たせする・・・あっ!」
と、店主と佐々木さんが驚き合う。昔、父島で知り合ったらしい。ご主人は、不動産屋の社長から最近八丈島の料理屋に転身したといううらやましい人だ。

車酔いも醒めたころに出てきたおそばもおいしかったが、仲間たちの頼んだノリノリラーメンもノリノリでおいしそうだった。

小雨の一日はだらだらと。
地熱発電所見にいったりガーデン荘でだらだらしたり。

夕方、ほかの人を残して最終便で八丈を離れる。八丈島にはまた来るだろう。

久しぶりに生きてる同居人の姿を見た。
友人が遊びに来たので、おかずたくさん作った。コンセプトは焼酎に合うもの。ちょっと作り過ぎたかな。


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