集落は西向きの斜面に広がっている。そのため、かなり距離があっても、少し開けたところなら青い海が見下ろせる。 反対側を見上げれば天上山。標高572m。「洋上アルプス」の名に恥じない、堂々たる山容だ。
この、海が見えて山も見える景色っていうのはずいぶん嬉しいことだ。 青い静かな海が見えれば晴れやかな気分になるし、背後に山が有るのは何だか安心感がある。
というわけで神津島だ。僕にとっては約10年ぶり。
「弁当買って山登り中に食べる」→「やっぱり寿司が食べたい」→「開いてればどこでも良い」と変わり、夜はカラオケバーになるんだろうなあといったレストランで、NHKの癒し系自然番組を見ながら、だらだら食事。
天上山へ登ろう。
ブレーキの壊れた人たちはズンズン登っていき、女、子供、高血圧はチンタラ登ってきた。
僕は宿にカメラを忘れた。レンズは持っていったのだが。
頂上部は広い。いろいろ回りたくもあったが、日暮れも怖い。最高地点まで到達し、下山。池も見れたし、砂漠も見れたし、核心部は押さえたと思う。
僕の旅行には、ほぼ毎回きれいな夕日がついてくる。今までの実績はそうだったが、いくら実績があっても、それが新たな成功を保証するわけではない。
今日はどうだろうねなんて言いながらも、とりあえずは海岸線に出てよう。
水平線の向こうにタコヤキ型に沈んでいき、放射状に伸びたひつじ雲のスクリーンを真っ赤に染める。 やっぱりすごい。夕日はいつも美しいが、今回は特に美しい。
「あしたばは天ぷらかおひたしか」「シッタカは出るのか」「刺し身は青物か白身か」「くさやは出ないか」 などと想像を膨らませながら夕食を待つ。
あしたば天ぷらは正解、赤イカもついておいしい。
泊まったのは、旅館「さわや」さん。民宿料金もあって、我々は当然民宿コース。朝ごはんに食べたしょうゆごはんというのがとてもおいしかった。
夕方から、きれいに晴れてきた。
星の土曜日、島の自然の中。
となると、星の写真を撮らねばなぁとの義務感もある。が、星を見ながら露天風呂入って、その後皆でだらだら飲みつづけて、昨日の寝不足も昼間の登山の疲れもあるし気持ち良く寝ようか、という誘惑を断ちきれるほど僕の意志は強くなかった。
宿の屋上から、申し訳程度に数カットだけ撮影
今回は旅行記出遅れてるなぁ。
●a diario de mi-chico (書くのか?)
「神津島に行く」とある世代の人に言うと、ちょっとヘンな視線を向けられる。一昔前はナンパ激戦区、あるいは処女を捨てに行くようなところだとは聞いたことがあるが、今は昔の話。
僕の見る現状は釣り人やダイバー、キャンパーなど、少数の数寄者がウロウロしているくらい、あとは静かな集落だ。神津島は意外と車の交通量多いが。
朝、荷物をまとめたあと、郷土資料館に行ってみた。休日はやらない利島の資料館とはちがい、ここは休日に開く。とりあえず貴重そうなものは何でも展示したというような、おばあちゃんの家の物置的な展示だった。
ここの展示物からも、全盛期は相当混み合っていたことがうかがえる。
確かに集落歩いていても、さびれたディスコとか、釣り人のおっさんはこんな土産買わないよなぁといった土産物とか、そういうなごりはある。
でもその寂れ方に、古い観光地によくあるような惨めな印象は受けないな。昔は若気のいたりでヤンチャやってましたけど、今は落ち着いた年齢の重ね方してます、って感じ。
産業として漁業がしっかりしてるからだろうか。この島の海と山は変わらずに美しいのがその理由なのだろうか。
帰りは高速船。船内を歩きまわったり宴会を続けるような楽しみはないが、速くて便利だ。高速バスみたいな感じ。
窓からの島の景色を楽しみながら弁当食べている間に、式根島、新島まで来てしまう。早い。
まっちゃんはまたもや知り合いに遭遇していた。
ちょうどおがさわら丸も帰港してきたところで、父島帰りの友人や出迎えの人たちと合流。
やはり飲みつづける。
今までニアミスしてきた人たちが、こういう場でつながったりする。新しい旅の話も、こういうところで作られたりする。
何だかやたらと時間が無い。家でも会社でも。
やらなければならないことと、どうしてもやっておきたいことが多くあって、目の前のそれらをやっているうちに一日が終わり、一週間が終わり、今日も午前2時になる。
会社にいるときは休出してでもやっておこうと思うことがたくさんあるが、家に帰ればちょっと会社休まないとできないよなぁということもたくさんある。
家の購入。オーストラリア旅行。写真展準備。
それぞれ時間をかけたかったり、必要だったりする。でもそっちに時間をかけて仕事が遅れるのは何だか悔しいし、家に帰ってからできることなんてせいぜい料理作って寝ることくらいだ。
もっと時間があれば洗濯もできるし台所の掃除もするしレタスも栽培するし風呂にも入れるのに。
部屋が汚いのも、床屋に行かないのも、女の子と手をつなげないのも、シャツが出ているのも、きっと時間が無いせいだ。
あちょっとキてるかも、と感じられた。残業中の休憩時間だった。
飲み会少しくらい遅刻したって、現代人ならそんなの茶飯事だし、やっておきたいことはたくさんある。もうちょっとデータとってから退社しようと思っていた。
でも、少し一休みするつもりで居室に戻った途端、体に力が入らなくなる。
あぁこりゃヤバイ。この状態でも無理しなきゃいけないってこともあるかもしれないが、今はそこまでは切羽詰っていない。ここのところずいぶん睡眠不足なはずだし、体を大事にすべきだ。
カルピス一杯飲んで、会社をあとにした。糖分と水分は効きが早い。
で、結局は久しぶりに会った友人と終電ギリギリまで楽しく飲んでいたから、ヤバイっていってもその程度なんだろう。