おがさわら丸乗船。
4度目ともなると、さすがにあまり気負いもないし、25時間の航海も、それほど長く感じないことを知っている。乗ってれば着くのだから。あとは酒飲んでゴロゴロしていれば良い。
天気予報と船員の態度から判断すると、この先は最悪ではないにしろそれなりに揺れるらしい。 八丈島のあたりを通過するころが最悪になるとして、その前後は睡眠にあてたい。食事もそれに合わせてなどと戦略を立てる。が、思ったよりも揺れず、良かった。
おにぎりと卵作って持ってきた。卵はいくつか翌日まで残しておいたら、傷んでいる味がした。大丈夫だろうか。
知り合いがいることは期待していなかったが、昨年同宿した大阪弁のおっさんが乗っていた。僕が数年前に考案したトランプ、新ババ抜きにおいて、魔法のような話術でもって場を支配した、不思議なおっさんだ。話相手ができるのは嬉しい。
ここで、「新ババ抜き」について説明する。
普通のババ抜きと同じく、ジョーカーは1枚。トランプを全枚数配って、ペアができたら各自捨てていく。
普通のババ抜きは右隣の(または左隣の)人からカードを選んで抜いていっていると思うが、新ババ抜きでは誰からでもとってよい。この点のみが違う。この結果どうなるかというと、カードの残り枚数がだいたい均一化される。残り枚数が少なくなると、誰もとってもらえなくなり、多い人からは皆がとっていくので減り方が早い。単純なルールながら、いかに自分のカードを引いてもらうかというアピール力と、誰がババを持っているかという推理力が試される。
ババを引いたときも、それを悟らせないようにするのが通常のセオリーだが、昨年の大阪弁のおっさんは、自分がババを持っていることを皆に宣言しながらも、皆をそそのかし、あえてリスクに挑戦させるという奇術師めいた技を使った。
などといっているうちにケータ諸島が薄く見えてきた。父島まではもう少し。
行きの船で酔わなかったのは初めてだ。
父島入港はちょっとだけ遅れて12時ちょうど。予想よりも良い天気。これならばボニンブルーの名に恥じない。
ははじま丸出航までは、1時間半ある。まず昼食orまずビジターセンターorまず神社の3択問題は、3番目を選ぶ。神社の上の展望台は気持ちいい。
願うことはただ一つ!奮発して100円を投資。
僕は通常神頼みはしないが、お空のことは願う以外に努力の仕様がないからな。
青い海を見ていると、体の奥からゾクゾクっと何らかのエネルギーが沸き起こってくる。テンション上がってくる。山登ったときの青い空を見上げたときもそうだ。あれと同じだ。
早く泳ぎたいね。桟橋から跳びこんで。
カヤックこいで、視界を海と空だけにしながらどこまでも進んでいきたい。
GWの小笠原歩いていると、突然道端で知り合いに会ったりする。地元でもそんなことないのに。 リピーターが多い(僕もそうだが)証拠だということの他に、知り合いができやすい環境だということもいえると思う。僕も知らない人に気軽に声をかけることは少ないが、小笠原旅行中だと何だか知らないうちに知人が増える。
小笠原の旅の充実度は、大部分が天候に左右される。GW前半は、どうやらずいぶんと良い天気だったようだ。
今日は南へ向かうほど天気が良い。
台湾あたりから長大な前線が伸びていたから、もしかしたら明日あたりくずれるかもしれない。でも確かではない。
その後ろには高気圧がきていたから、そのあと晴れるかもしれない。でも確かではない。小笠原は太平洋のどまんなかで、内地の予報と関連が少ない。天気図見てあやしげな予報をする程度しかできないが、気象庁の予報と同様、たいして当てにならない。
この空と海が続いて欲しいなぁ。
さらに知り合い密度の高い母島。恵子さんの作るごはん。帰ってきた、という感じがする。
みな、赤く日に焼けている。今日の好天を思い切り楽しんだようだ。うらやましいなぁ。
そして宴会。昔から知り合いだったのか今日初めて会ったのか、まぁたいした違いはない。やっぱり皆ここまで来るような人たちで、遅くまで歓談。
一日は長い。
母島は時間の流れがゆっくりだと皆いうが、今日はそれが理由だというよりは、天気が良く変わり、人間もいろいろやったからそう感じるのだと思う。
自分のやりたいことに対して、貪欲でいようと思う。現在の状況から期待できる、最大の楽しさをイメージして、それを実現できるように行動していこうと思う。まぁ状況が変わっていくとやりたいことも変わっていくが、その都度その都度一番やりたいことをやっていけば良いのではないかと思う。 ぼーっとするにしろがんばるにしろ、充実した時間を持ちたい。
今日は当然カヤック。ごんずい新艇の乗りごこちを試さねば。
朝の散歩時は半分青空、半分高曇り。
出発しようと思ったら、朝食後にパラっときた。様子を見ていたらさらに景気よくやりだす。
皆でのんびり待っていると回復の兆し。
では行こう。
ははじま丸見送り。母島旅行の中で、重要度の高いイベントだと思う。 午前中カヤックに乗った人が、母島から父島へ移る。 まぁどうせ帰りのおがさわら丸でまた会うのだけど、見送る理由ができて良かった。 一人に対して10人以上跳び込む、豪華な見送りとなった。(ビビッていた者もあったが)
雨を吸ったあとの森は、豊かに匂う。カブトムシを飼っていたときに味わった、湿った土の香り、甘い果物の香り、色々な花、木々、その他動植物の香り、潮と風の香り、そんなものが色々混じって漂ってくる。
高気圧、波風弱し。一日ツアーで向島を狙う。
滞在中は、カヤック普及活動として同宿した人たちを連れていくツアーが多い。しかし今日は我々にとっての処女地開拓に費やす。
向島は、母島の港から向こうに見える無人島である。上の月夜の写真の島。母島から約5km、ちょっと頑張ればそう遠くないはずだが、途中に陸地がなく、沖を漕ぐことになる。沖では目標物がなく、進んでいる気がしなくなるというのが今まで避けていた理由だ。
実際に海に出てみると、そう大変なものでもなかった。長距離の自転車や登山と同じく、余計なこと考えずに進んでれば、ゆっくりでも段々と近づいてくる。天候安定しているし、うねりはあるが海は静かだし、危険も感じない。
クジラ、イルカ、カメのたぐいは、探したが見つからず。
島の裏側の入り江の奥にある砂浜へ移動。 本島に別の小さな山がぶつかった地形で入り江を形成している。ぶつかった付け根が左右とも砂浜になっていて、コペペ浜、小湊海岸と名付けられている。父島にも同名の砂浜があるが、そこからとったのだろう。
海岸の随所に、アリの巣のように塹壕跡がある。奥は完全な暗闇で、どこまで続くのか分からない。ヘッドランプ持ってくれば良かったのだが、まさか必要だとは思わなかった。 こんなに必要なのだろうかと疑問も沸くが、小笠原もかんほう射撃もだいぶ受けたらしいし、上陸しやすいところにはたくさん作るのかもしれない。
今年のヘルパーはすごいぞ!濃いぞ!!
新宿のライブハウスで客を集めるようないっちゃってる感じで、母島とユキナを歌うシンガーソングライター、音骨氏。
目指せ母島の星!
●音骨ファイル
「アタシドザえもん」聴いてみたいぞ。
というわけで恒例化しつつあるGWの小笠原旅行も終わり。
やっぱり1航海は短い。5泊6日と言っても、母島だと移動に前後二日、遊べるのは丸二日となってしまう。これでは普通の週末と大して変わりが無い。
とはいえ、その二日間も天候に恵まれたし、合間合間にまたいろんな人に会えた。やはりリピーターが多く、前に同宿した人、おが丸であったことのある人は、20人を越えたのではないか。
朝ごはんを抜いて遊びに行く人は、今年もいた。何故かいつも女性が多い。南崎行くにしろ乳房山行くにしろ、散歩って呼べるほど気軽なところでも無いのだが、元気なことだ。
僕の場合は母島も4度目ともなり、おおむね一度は行った場所が多い。そのためか、初めて行った時よりもモチベーションが減っている。脇浜でカメが卵産んでいたと聞いたくらいでは、感動が無くなっている。これは良くないな。彼女たちを見習わなければ。
でも、一度小笠原に来た人は、高い確率で再び訪れる。最初の訪問ですべて回らず、いくつか宿題を残しておくという考え方も悪くないのではないかと思う。
田澤家のとうちゃんかあちゃんは相変わらず愉快だったが、子供たちはそれぞれ大きくなっていた。
長男は大人になる過程にいた。
長女もだいぶお姉さんになっていた。
次女は数年前の長女のようだった。
赤ん坊は家族と宿泊者から大切に可愛がれていた。
ごはんはやっぱりおいしかった。
来年はどうしようかな。9連泊するか、別の場所に行くか、どちらかにしようと思っている。